TOYO動楽メール


動楽道免許皆伝 其ノ一 【スタッドレスタイヤ 初級編】

メール本文より続く

<アイスバーンが滑る3つの理由>

では、アイスバーンではなぜ「ツルン」と滑るのでしょう?
いくつかの理由があるのですが、3つにまとめてみました。

1.表面に水の膜ができる

2.タイヤ接地面の密着度が低い

3.そもそもツルツルしている



1.表面に水の膜ができる
冷凍庫から取り出したばかりの氷は、滑るどころかひっつきますよね?
手や舌にひっついて痛い思いをした人も多いはずです。
ところがしばらくテーブルの上に置いておくと、水が解け出して今度はスーッと滑っていきます。
つまり、氷が解けて表面にできる薄い水の膜が滑る原因なんです。
スケートが滑るのも同じ原理ですね。

<接地拡大概念図>

2.接地面の密着度が低い

アイスバーンには大小無数の凸凹が存在しています。
それでも暖かい場所でならゴムは柔らかいので、凸凹に形を合わせて路面にピタッと吸い付くことができます。
ところが、気温が下がるとゴムの柔軟性は徐々に失われ、凸凹面への密着度はどんどん低くなります。
接地面積が小さくなる分、滑りやすいわけです。

3.そもそも表面がツルツルしている
たとえうまく密着できても、氷の表面は土やアスファルトの道と比べて「なめらか」です。
とにかく滑りやすいんですね。

さて、これで雪道の滑る理由はだいたい分かってきました。
ようやく本題のスタッドレスタイヤの話です。

これまで見てきた3つの滑る原因を、どうやってクリアするのか?
これが我々に課せられた課題だった訳です。
一つ一つ、それに対する回答をご紹介しましょう。

課題その1 水の膜を克服せよ

雨の水なら、タイヤの溝の中に水を掻き集め、吐き出してしまえばいいんですが、 氷は圧力を受けると溝がないところだけの表面が溶けるので、溝だけでは不十分。
ですから、目に見えないところで秘密兵器が投入されています。

それが「水を吸い込むゴム」。
ゴムが水を吸い込むというのは不思議な感じがしますが、例えばトーヨータイヤのGARIT2では「層状結晶」という天然の結晶体がゴムに練りこまれています。

タイヤ1本あたり2,000億粒という膨大な数ですから、もちろん肉眼では分かりません。「層状結晶」には小さな隙間が無数にあって、筆が墨汁を含む要領で水を吸い上げます。これで水を排除して、路面をグリップしようという訳です。

課題その2 ピタッと密着せよ

アイスバーンにしっかり密着させるためには、冷えても硬くならないゴムを開発する必要があります。
研究の結果、「シリカ」という物質を混ぜると、低温時にもゴムが硬化しないことが分かりました。
このシリカ配合のゴムによって、寒くても路面の凸凹に密着する高性能スタッドレスタイヤを作ることが可能になりました。

課題その3 ツルツルをひっかけ

そもそも表面が滑らかで滑りやすい氷をどうやってしっかりグリップするか?

まず思い付くのは、硬いツメみたいなもので氷を砕き、直接路面をひっかく方法です。昔のスパイクタイヤがこれですね。
文字通りタイヤがスパイクをつけていて、氷をバリバリと砕きながら走りました。(雪のない道だと本当にすごい音がして火花も見えました。)

雪国では大変心強いタイヤだったんですが、スパイクが硬いため道路も削ってしまって、粉塵もすごいので禁止になってしまいました。
それからスタッドレスタイヤの猛烈な進化が始まった訳です。

「スタッドレスタイヤ」というのは、スパイクタイヤの「スタッド」(=鋲)がない、という意味ですね。でも実は、今のスタッドレスタイヤには、「スタッド」の替わりになるものが埋め込んであるんです。

素材は、氷より硬くて路面よりも柔らかいもの。メールマガジンのタイヤクイズに回答した方なら、わがトーヨータイヤはここでクルミを使っていることをご存知ですね?

その名も「鬼クルミ」(笑)。これ、本当にクルミの種類の名前なんですよ。いかにも「効きそう」でしょう?天然素材で環境にもやさしいので、もってこいの素材だったんです。

このクルミがスパイク替わりという訳です。 もちろん、マカデミアナッツのような、目で見えるクルミの塊が入っている訳ではありません。クルミの殻を細かく砕いてゴムに練りこんであります。

(トーヨータイヤでは、ここまで見てきた3つの素材を配合したゴムを「吸水結晶ゴム」と名付けて、特許出願中です。)
<吸水結晶ゴムイメージ図>
そして物語は続く
いかかでしたか?

今回はスタッドレスタイヤの基本的な3つの機能を紹介しましたが、使っている技術や機能のレベルはメーカーによって違いがあります。外見は全く同じに見えて、実は様々なタイプのスタッドレスタイヤがあるんです。
15秒のCMでそんな違いは分からないですよね。

次回は、スタッドレスタイヤが続ける「更なる進化」を取り上げたいと思います。