トーヨータイヤTOP > 商品開発ストーリー > プロジェクトTOYO > 第6回 PROXES誕生秘話

プロジェクトTOYO

第6回 PROXES誕生秘話 クジラ漁師の熱き魂に応えよ! 世界最速への挑戦

1991年春、ヨーロッパで誕生したPROXES。その後、アメリカへと進出、社運を賭けたタイヤ開発、地道な販売促進活動が実を結び、欧米で高い評価を獲得した。

「PROXES誕生秘話 社運を賭けたタイヤ開発」はこちら

さらなる前進

欧米のユーザーに支持されたPROXESだが、ヨーロッパでは、新車メーカーにタイヤ納入できなければ一流ブランドとして認められない。
「新車メーカーへタイヤを納入しよう。PROXESを一流ブランドにしよう!」立ち上がったのは、タイヤ商品企画(※1)の藤川。「よい製品であれば、必ず認められる」。2001年春、藤川を中心にPROXESシリーズの新たな販売促進戦略が始まった。

PROXESのブランド展開を一任されている藤川。藤川の言葉、一つ一つに熱意が込められている。
PROXESのブランド展開を一任されている藤川。藤川の言葉、一つ一つに熱意が込められている。

新車メーカーへの挑戦

しかし、依然として立ちふさがる巨大タイヤメーカーの壁。プロジェクトは、思うようには進まなかった。
【TOYO TIRES】が勝負できる土壌はないものか」──その答えが、チューニングメーカー(※2)「KLEEMANN(クリーマン)社」へのタイヤ納入だった。

世界有数のチューニングメーカー

KLEEMANN社のクルマ。「KLEEMANN SL50K ガルウィング」
KLEEMANN社のクルマ「KLEEMANN SL50K ガルウィング」

KLEEMANN社は、本拠地をデンマークに置く世界有数のメルセデスベンツ専門のチューニングメーカー(※2)。
KLEEMANNのクルマは、チューニングカー特有の派手な装いはなく、見栄えも主張しすぎない。「奥様がスーパーマーケットへ買い物に行けるクルマ」をコンセプトとした、上品な外観が特徴である。

こだわりの仕様

メルセデスベンツの馬力(※3)向上を目指す一般的なチューナーは、排気を利用するターボチャージャー(※4)を採用する例が多い。だが、KLEEMANNは、機械式に過給するコンプレッサー(※5)(メカニカルチャージャー)にこだわる。その理由は軽快なドライブを楽しめる魅力にある。コンプレッサー(※5)は、アクセルを踏み込んだときに一瞬のタイムラグがあるターボチャージャー(※4)とは違い、アクセルに敏感に反応し、パワーを発揮するのだ。

ではなぜ、KLEEMANNはコンプレッサー(※5)にこだわるのか。その背景にはKLEEMANNの本社、デンマークという土地と深い関わりがあった。
デンマークは、もともと「バイキング発祥の地」である。デンマークをはじめとする北欧では、漁業の頂点にクジラ漁があり、そこでは他の漁船よりも早くクジラに近づくためのエンジンの性能競争もあった。その結果、アクセルのレスポンスが良く、操船が軽快なコンプレッサーエンジンの漁船が勝ち残ったのだ。現在、このコンプレッサー技術は、デンマークを発祥に各国のクルマや船舶のエンジンに活用されている。

【TOYO TIRES】の狙い

こだわりの仕様で高い性能を発揮するチューニングカー(※2)。なかでも、ブランド力にこだわらず、日本市場に興味を持ち、且つその世界において新勢力として名高いメーカー、それがKLEEMANN社であった。早速、【TOYO TIRES】はKLEEMANN社との関係作りに動いた。

立ちはだかる現実

しかし、そこにはいくつかの障害があった。第一に、【TOYO TIRES】がデンマークでのタイヤ販売の実績が小さいこと。第二に、KLEEMANN社サイドの【TOYO TIRES】に対する認知度の低さ。このままでは、またしても前に進めなくなる。2002年夏、【TOYO TIRES】のヨーロッパ駐在のマーケッターが思い切った作戦に出る。

マーケッターの提案

【TOYO TIRES】のネットワークを最大限に活用した協力体制。──マーケッターは考えた。アメリカでの高い人気と、確固たる地位、ブランド力が、【TOYO TIRES】の武器となる。そして、日本での展開支援も日本市場を狙うKLEEMANN社には魅力的なはずだと。
マーケッターはKLEEMANN社に対し、アメリカでの実績を説明。一方、日本でもKLEEMANNの正規代理店である「KLEEMANN JAPAN」に対して日本での展開におけるバックアップを約束した。
──その結果、KLEEMANN社からSUV車(※6)の世界最速記録挑戦の誘いを受けたのだ。

社運を賭けたプロジェクト

SUV車(※6)の世界最速記録への挑戦。【TOYO TIRES】が、世界最速記録をサポートするタイヤメーカーとして選ばれたのだ。この挑戦は、チューニングメーカー(※2)にとって社運を賭けたプロジェクト。装着するタイヤにも高い性能が要求される。SUVタイヤのトップブランドという自負を持っていた【TOYO TIRES】。それだけに、この挑戦には力が入る。【TOYO TIRES】は、欧米で高評価を獲得していたPROXESシリーズのSUV用タイヤ「PROXES S/T」を提供した。

世界最速記録への挑戦

挑戦の目標は、その時点での最高時速記録266km/hを塗り替えること。世界最速記録用のタイヤというと新たに開発が必要に思われるが、ここで使われるのは、あくまでも市販スペックのタイヤ。最速記録に対して、社内での室内テストでは確認できていたものの、実車走行ではどのようなトラブルが発生するか予測できない。プロジェクトに緊張が走る。そして、いよいよ記録挑戦の日を迎えた。

2003年2月8日(金)。この日、使われたクルマは「メルセデスベンツのAMG ML55」をベースにして製作された「KLEEMANN ML55K」。晴天の中、走行はイタリアNARDO市で実施された。

世界最速記録の挑戦に使われたクルマ「KLEEMANN ML55K」
世界最速記録の挑戦に使われた
クルマ「KLEEMANN ML55K」
ドライバーにも緊張が走る。
ドライバーにも
緊張が走る。

世界最速記録は塗り替えられた

世界最速記録に挑戦した当時のメンバー。
世界最速記録に挑戦した
当時のメンバー。

──スタートから220秒後、世界最速記録は塗りかえられた。KLEEMANN 社の「KLEEMANN ML55K」、そして【TOYO TIRES】の「PROXES S/T」は、SUV車(※6)における世界最速記録282km/hを樹立したのだ。
この日はデンマークの国営テレビも駆けつけ、記録樹立の模様は大きく放映された。そして、【TOYO TIRES】の手により、日本においても雑誌等で多方面に掲載。KLEEMANN社の功績は、広く世界へと発信されたのだ。

(2004年3月掲載)

(※1)商品企画
タイヤの商品企画は、クルマとタイヤの市場動向を予測し、最新技術をどのように商品に反映させるかを決定する。

(※2)チューニングメーカー
性能をさらに引き出すため、クルマのカスタマイズをするメーカー。

(※3)馬力
トルクに回転数を掛け合わせたもの。エンジンの回転数に比例して、大きくなる。

(※4)ターボチャージャー
排気圧を再利用してエンジンの馬力(※3)を上げる装置。

(※5)コンプレッサー
排気を使わずにエンジンの馬力(※3)を上げる装置。エンジン自身で駆動し、低速域でもスムーズな加速が得られる。

(※6)SUV
「Sports Utility Vehicle(スポーツ・ユーティリティ・ビークル)」の略で、RV(レジャー用多目的車)の一種。詳しくは「初心者必見!カーライフ講座:Q8」を参照。



CLOSE