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第13回 「ウィンタートランパスMK3」開発秘話 後編 360°スタッドレスタイヤの誕生!

横滑りに強いタイヤを作る」というコンセプトの基に、全く新しいアプローチからスタッドレスタイヤの企画に取り組むことになった商品企画担当の蓮見。その結果である「ウィンタートランパスMK3(ウィンタートランパス・エムケースリー)」は、どのようにして開発されたのだろうか。

「ウィンタートランパスMK3 開発秘話 前編」はこちら

雪道を知るタイヤ設計者の熱き思い

雪道の怖さを知るタイヤ設計士の藤竹は、「横滑りしない」タイヤ開発に誰よりも熱い思いを持っていた。
雪道の怖さを知るタイヤ設計担当の藤竹は、「横滑りしない」タイヤ開発に誰よりも熱い思いを持っていた。

2004年4月。【TOYO TIRES】の仙台工場にいたタイヤ設計担当の藤竹は、伊丹にある「タイヤ技術センター(※1)」へ転勤になった。配属早々、スタッドレスタイヤ開発チームの一員に加わり、「横滑りに強いタイヤを作る」というコンセプトとトレッドパターン(※2)のラフスケッチに、藤竹は共感した。

この性能は、自分も欲しいと思っていた…!

仙台での4年間、余暇には宮城蔵王でウィンタースポーツを楽しみながらも、雪道の走行に苦労させられた藤竹には、「横滑りしない」のがいかに重要か、ということを身に染みて感じていた。友人たちとスキー場に出かけた帰りなどには、雪道の走り方について話し合ったことが多かったのである。

──タイヤ開発も中盤段階にさしかかり、サイプ(※3)の詳細デザインが決定した時、そのコンセプトにふさわしいトレッドパターンはその姿を現していた。六角形のサイプと放射状に伸びる波型サイプを組み合わせた新世代サイプのスパイダーサイプをはじめ、ブロックのサイプ内部断面に凹凸を設けた3Dグリップサイプ、イン側のサイド部には大きなW形状と細かいギザギザのWカッターを配置することで、アイスバーンをよりしっかりとグリップすることが可能になっていた。

スパイダーサイプ
新開発のスパイダーサイプ。六角形と波型サイプが特徴。
3Dグリップサイプ断面写真
より高い剛性を保持するため、サイプの内部断面に凹凸を設けた。
Wカッター
大きなW形状と細かいギザギザのWカッター。わだち路でも優れたひっかき効果。

立ちはだかる構造の壁

「これは、きっと今までになく安心して走れるスタッドレスタイヤになる!しかし、この複雑なトレッドパターンをきちんと支えるタイヤ構造が必要だ。」
藤竹は、タイヤ設計者として力量が問われるプレッシャーを感じた。

まず、藤竹が最初に取り組んだのは、非対称パターンで複雑なサイプを組み合わせたトレッドパターンを支え、しかも偏摩耗(※5)を抑える構造の設計である。高剛性でありながら適度な柔軟性を持ち、サイプの動きをきちんと機能させるボディの構造が必須だった。部品の配置を細かく調整しながら目標数値に近づけていくのは、根気のいる作業だった。新しいベルト部材の組み合わせを考え、新しい展開を期待したが、シミュレーションの結果には改良の成果が現れず、あえなく失敗という結果が続いた。
しかし、とうとうパソコン画面上のタイヤイメージから、実物のタイヤを試作する段階にこぎつけたのである。

高性能ボディ

次に問題となったのは、複雑なサイプを持つタイヤを精密に不具合なく製造できるかということだった。そのためには、小さなサイプの形1つ1つをくっきりと刻印できる金型(※6)の製作と、金型からタイヤを傷つけずに取り出す技術がいる。だが、加硫機(※7)からタイヤを取り出す工程は、金型の動きや温度設定が複雑なため、工場スタッフのノウハウが必要だった。

藤竹は試作品の評価を繰り返す傍らで、試作タイヤの製造に立会い、工場スタッフとコミュニケーションを重ねた。工場スタッフは、自分たちにしか出来ないこの仕事を自分たちの熱意をアピール出来るチャンスと思った。彼らは、複雑なサイプの金型からタイヤを傷つけずに取り出す加硫工程を見直し、連続生産できる体制の準備を整えた。
藤竹は、工場スタッフの努力に心から感謝し、そして彼らを誇りに思った。

テストドライバーのお墨付き

完成したタイヤを手にする藤竹。雪道を知る男の思いが「ウィンタートランパスMK3」を作り上げた。
完成したタイヤを手にする藤竹。雪道を知る男の思いが「ウィンタートランパスMK3」を作り上げた。

また、テスト走行時には、伊丹以外の試験場所属テストドライバー(※8)からも横グリップについて高い評価が得られた。
「冬にこのタイヤを使うのが楽しみだよ」と声をかけられたのだ。
サイプの1つ1つがきちんと機能していればこその使用感を実現した結果だった。

「これで、このタイヤを発売する準備が整った」
──藤竹はこれまでにない、大きな満足感に包まれていた。

安心して雪道を運転してもらうために

全国で開催しているスタッドレスの試走会の様子。開発担当自ら、性能特長を説明し、ミニバン専用スタッドレスをアピールした。(会場:島根県平田市 主催:トーヨータイヤの販売代理店)
全国で開催しているスタッドレスの試走会の様子。開発担当自ら、性能特長を説明し、ミニバン専用スタッドレスをアピールした。
(会場:島根県平田市 主催:トーヨータイヤの販売代理店)

そして、「360° スタッドレス」を新コンセプトとした【TOYO TIRES】2005〜2006年シーズンのスタッドレスタイヤの発売が始まった。
現在、藤竹や蓮見らは、全国11箇所で販売会社が開催しているスタッドレスタイヤの試走会に積極的に参加し、「ウィンタートランパスMK3」の商品説明を行っている。

今シーズンの冬は、1人でも多くの方に安心して雪道を運転してもらいたいという熱い思いが、彼らの行動力の源である。【TOYO TIRES】の挑戦する心が生かされた新商品開発に、終わりはない。

(2009年5月改訂)

(※1)
タイヤ技術センター
当社のタイヤ開発部門がある技術センター。「氷盤試験機」「FT式コーナリング試験機」「フラットドラム試験機」など、様々な走行条件を再現できる試験機を完備し、タイヤをテストしている。

(※2)トレッドパターン
タイヤの表面にある溝と切り込みで構成された柄や模様のこと。詳しくは「何でもタイヤ講座:Q11」を参照。

(※3)サイプ
トレッド(※4)に加工した切れ込み。切れ込みでトレッド面を柔軟にして、アイス路面と密着させている。

(※4)トレッド
タイヤが路面と接地する部分のこと。

(※5)偏摩耗
タイヤのある一部の部分だけが、減っていくこと。

(※6)金型(モールド)
タイヤを加硫するときに使う金属製の型。タイヤの金型は、トレッドパターン、サイズごとに異なる。詳しくは「走れ!タイヤくん:第27回」を参照。

(※7)加硫機
生ゴムに硫黄などを混ぜて合わせて加熱し、ゴムの弾性を増加させる機械のこと。

(※8)テストドライバー
開発段階のタイヤを運転し、目指した性能に達しているかを評価するドライバー。優れた記憶力、冷静な判断力、操作の正確性が求められる。詳しくは「走れ!タイヤくん:第4回」を参照。



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