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第19回 「ウィンタートランパスMK4」開発秘話 後編 冬の走りを変える「新技術」とは?

ミニバン専用のスタッドレスタイヤ、ウィンタートランパスシリーズの新商品開発に向け、若き開発担当者朝山は自らの信条「どんな斬新なタイヤでも、安全を優先した結果でなくてはならない」を実現するため、新機軸を探してもがいていた。

「ウィンタートランパスMK4 開発秘話 前編」はこちら

かつてなかったスタッドレスタイヤを目指す

実は、朝山にはとっておきのアイディアがあった。しかし、実現可能なのか?スタッドレスタイヤでやる意味があるのか?そんな迷いがあり、【TOYO TIRES】の社内でも限られた人にしか考えを明かさなかった。
それは、3種類のトレッドコンパウンドを配置する『トリプルトレッド構造』を新商品に搭載する試みだった。実現すればスタッドレスタイヤ史上初*の構造となる。
タイヤの内側と外側、ベース部分にそれぞれ性質が異なるコンパウンド(※1)を採用したトリプルトレッド構造は、元々車高が高く重量のあるミニバンのふらつきと偏摩耗(※2)を抑えるために開発された技術だ。すでにその技術は、トランパスMP4に搭載され、多くのユーザーから高い支持を受けているが、スタッドレスタイヤとしての可能性を試したことは、いまだなかった。
かねてより「トランパスの遺伝子」を受け継ぐスタッドレスを作りたいと考えていた朝山は、3つの異なるコンパウンドで複数の性能を実現させることのできるトリプルトレッド構造の秘めたる可能性を信じ、史上初のスタッドレスタイヤ作りへとチャレンジし始めたのである。

アイスバーンを360°しっかりグリップ

朝山は、ミニバンの特性を一から研究しなおし、クルマ側のデータとタイヤ走行データをシミュレーション解析用のデータベースとして充実させた。解析を繰り返し実施した結果、ついに、トリプルトレッド構造はスタッドレスタイヤにも有効であり、降雪路面での安全性能を高めるという確証を得たのである。
ミニバン車両は停車するためにブレーキをかけた場合、イン側の接地面が長くなることが証明された。一方アウト側はコーナリング時のふらつきを防ぐため、柔らか過ぎる素材は避ける必要がある。
このシミュレーション解析の結果にしたがい、イン側には発進・制動時にグリップ力を発揮するスーパーソフトコンパウンドを採用。また、アウト側にはコーナリング時にクルマをしっかり支えるソフトコンパウンドを搭載した。さらに、この2つの異なるコンパウンドを支えるソフトキープコンパウンドがそれぞれの経年変化を抑え、耐用年数を延ばすことができる。3つの異なるコンパウンドが組み合わさることにより、高次元のアイス制動性とコーナリング性能を兼ね備えたスタッドレスタイヤができるのだ。

「よし、いける!トリプルトレッド構造を新商品に投入しよう!」
朝山は初めて【TOYO TIRES】全体に新商品の構想を公表し、社内は驚きに包まれた。トランパスシリーズとしての代表的な要素「トリプルトレッド構造」が高いアイス性能を発揮するとは、誰も予想すらしていなかったのである。
「これは、今までとは全く違うスタッドレスタイヤになりそうだぞ…」
朝山は【TOYO TIRES】社員全体の期待をひしひしと感じていた。それは確かにプレッシャーではあったが、すでに突破口を見つけた彼にとっては、その期待もある種心地よい追い風となっていたのだ。

トリプルトレッド構造モデル図

全方向に進化したスタッドレスを作るために

新商品の構想は確立できた。後は、これを具体化するために、技術による肉付けがなければ史上初のスタッドレスタイヤは誕生しない。朝山は根気よく、1つずつ難問をクリアしていった。
トリプルトレッドを支えるための高剛性ボディ構造を作り上げるためには、神経をすり減らすような微調整と試験が必要となる。加えて、先の研究結果よりイン側とアウト側に役割分担をさせた方がより有効であると考えた。非対称パターンの採用である。イン側には『アイス制動性』を向上させるブレーキングサイプ、そして3Dミニバングリップサイプを採用。アウト側には『アイスコーナリング性』を重視した設計として360°サイプ3Dグリップサイプなどを採用した。特にIN側の3DミニバングリップサイプとOUT側の3Dグリップサイプは、接地するトレッド面の剛性を確保するのに必要な技術であり、アイス性能の向上と、走行安定性・耐偏摩耗性の両立を実現させるために、絶対欠かせない技術であった。
この全ての技術が十全に機能するよう、朝山は気の遠くなるような回数の微調整を繰り返したのだ。
また近年、一部のユーザーから、溶けかけた雪が作るシャーベット路面が怖いという声が増えてきていた。これを解決するために、新技術のスラッシュスリットも搭載した。幅広のスリットが排雪性を向上させ、制動性を高めてくれる。さらに溝底にはブリッジを配置することにより、タイヤのブロック剛性が低下するのを抑えて偏摩耗の発生も抑制するのだ。
こうして、非対称設計を駆使した独特な形状が完成した。トランパスシリーズの遺伝子を受け継いだ新しいスタッドレスタイヤ「ウィンタートランパスMK4」が誕生したのだ。

採用技術

より高いハードルを求めて

「ウィンタートランパスMK4」が発表となり、朝山は安堵のため息をついた。すでに次の新商品の開発は始まっている。より高い理想を追い求め、実現するには常に地道な、人には見えない努力が必要だ。しかし朝山は、そんな困難にこそやりがいを感じている。今はまだこの世に存在しない、よりよいスタッドレスタイヤを作り上げることがユーザーの安全を守り、冬のドライブを快適にすると信じているからだ。彼の挑戦は、今も続いている。

※史上初*は当社調べ。

(2008年9月掲載)

(※1)コンパウンド
タイヤの原料ゴムに、カーボンやオイルなどの配合剤を混合した、ゴム配合物。タイヤの各部には、目的に合わせて様々なコンパウンドが使用されている。

(※2)偏摩耗
タイヤのある一部分だけが、減っていくこと。詳しくは「プロジェクトTOYO:第1回」を参照。



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