トーヨータイヤTOP > 商品開発ストーリー > プロジェクトTOYO > 第21回 「プロクセスC1S」開発秘話 後編

プロジェクトTOYO

第21回 「プロクセスC1S」開発秘話 後編 まさかの両立を実現!開発者の新たな挑戦

グローバルブランド「PROXES(プロクセス)」の名に恥じない、世界を席巻する新商品をつくるとの思いで開発がスタートした「PROXES C1S(プロクセス・シーワンエス)」。タイヤの性能を決定付けるパターン・デザインは、「JUDO(柔動)」という従来にない新たなコンセプトだ。技術開発担当である守屋と佐藤は、今までにない独自のコンセプトを実現させるべく、苦闘していた。

「プロクセスC1S 開発秘話 前編」はこちら

前例のない新たな開発

難題を乗り越え新商品を開発した技術開発担当リーダー・守屋(左)、パターン・デザイン担当・佐藤(右)
難題を乗り越え新商品を開発した技術開発担当リーダー・守屋(左)、パターン・デザイン担当・佐藤(右)

上質な“乗り心地”と“走り心地”という相反する性能を両立するために誕生したパターン・デザインコンセプト「JUDO(柔動)」。タイヤのOUT側にダイナミックな「動」の性能と、タイヤのIN側にしなやかさと優美さを備えた「柔」の性能を備えたユニークなパターン・デザインコンセプトは、今まで誰も手がけたことのない開発だ。
「2つの異なる性能を両立するためには、非対称パターンの採用しかない」
PROXES C1S」のパターン・デザイン担当となった技術開発担当・佐藤は、【TOYO TIRES】のヒット商品、ミニバン専用タイヤ「TRANPATH」シリーズで非対称パターンの設計を手がけていた経験から、そう確信していた。
だが、その一方で――。
「本当に相反する性能の両立が実現できるのか?」
前例のない開発に、佐藤は不安を抱かずにはいられなかった。だが、そんな佐藤の胸中を察した技術開発担当リーダー・守屋は、ひと言。
「佐藤なら必ずできる」
佐藤への期待と信頼をこのひと言に凝縮したのである。

実現可能か!?「走り心地」×「乗り心地」

「お客様の笑顔が見たい、満足してほしい」との一心で開発を手がけてきた佐藤。
「お客様の笑顔が見たい、満足してほしい」との一心で開発を手がけてきた佐藤。

佐藤は、非対称パターンの特性でもある機能分担に着目し、“乗り心地”と“走り心地”それぞれの性能を、ひとつひとつ解決していくことから取り掛かった。
タイヤのOUT側には、クルマの走行性能と安定性を向上させる「高速スタビリティ(高速安定性)」を実現させるため、リブ構造を採用した。しかし、タイヤにしっかり感をもたせるリブ構造は、クルマの安定性を向上させることには優れているが、ブロックが硬いため、乗り心地が損なわれてしまう。
「これではダメだ。タイヤの剛性を維持しながら乗り心地もよくしなければ…」
佐藤は、日々、試行錯誤するなかで、やっとひとつの答えを見つけた。それは、タイヤの縦方向に刻んだ「ディンプルグルーブ」の採用だ。これにより、タイヤが横方向にもたわみやすくなり、タイヤと路面との接地性を上げ、クルマの安定感を実現することができたのだ。ひとつめの難題をクリアし、佐藤は小さなガッツポーズを決めたのである。

「静粛性」「乗り心地」へのあくなき闘い

しかし、佐藤には新たな難題が待ち受けていた。それは、タイヤのIN側での「静粛性」「乗り心地」性能の実現だ。そこで佐藤は、サイプを多く設けてノイズを低減させるとともに、スーパーコンピューターを駆使したFEM解析(※1)により、パターンから発生する放射音を解析し、ノイズの発生する部位を特定して何度も何度もパターンの微調整を重ねていった。
「少しでもノイズを減らしたタイヤをお客様に届けたい」
佐藤は、その一心で、地道な作業を繰り返し、最適なパターンを作りこんでいったのだ。また、それと同時に佐藤は、タイヤパターンの上下位相(※2)の解析も行った。解析を繰り返し、ノイズ低減に最適なパターン位相をも見つけ出していった。満足のいく結果が次々と得られるなか、佐藤は「PROXES C1S」の性能に自信を深めていった。

ノイズを減らせ!

「開発者はタイヤで語るしかない」。根っからの開発者魂をもつ守屋リーダー。
「開発者はタイヤで語るしかない」。根っからの開発者魂をもつ守屋リーダー。

佐藤がパターン・デザインの設計を進めていく一方で、守屋は、タイヤの構造設計でのノイズ低減を試みていた。「PROXES C1S」のターゲット車種であるプレミアムセダンを一から研究していくと、ある発見があった。それは、「ノイズ」の違いだ。車内で聞こえるノイズは、通常2つに分かれる。「ゴー」という低周波音か、「ガー」「ファー」という高周波音だ。近年のプレミアムセダンでは、高周波域にノイズのピークが起こっている。ということは…
「高周波音をおさえこめれば、ノイズを気にすることなくドライブを楽しむめるはず!」
守屋は、パターン・デザイン設計の際にも用いられたFEM解析で、「振動解析」を行った。日々、解析結果と向き合い続けた末、高周波域を低減させるためには、幅広のベルト補強が必要不可欠だとわかったのだ。
「タイヤの構造からノイズが低減できる」。守屋はついに確信を得たのだった。

まさかの両立を実現!

完成した「PROXES C1S」を前に、にこやかに開発秘話を語る、守屋リーダーと佐藤。
完成した「PROXES C1S」を前に、にこやかに開発秘話を語る、守屋リーダーと佐藤。

ついに「PROXES C1S」は、パターン設計、タイヤの構造設計から、「静粛性」「乗り心地」を実現することができた。これで、ひたすら追い求めていた“走り心地”と“乗り心地”という相反する技術の両立が叶った。まさに、「JUDO(柔動)」のコンセプトが実現したのである。

「最高のタイヤをお客様に届けられる!」
某日、完成した「PROXES C1S」装着車両で、テストコースを走行した守屋、佐藤は確信した。
だが、二人の開発者魂は、今も熱く燃え続けている。さらなる新商品のために…。

(2009年6月掲載)

(※1)FEM解析
Finite Element Method の略。スーパーコンピューターを用いた解析手法のひとつ。

(※2)上下位相
音から発せられる波長のズレを表す。



CLOSE