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プロジェクトTOYO

第24回 「エコウォーカー」開発秘話 前編 “エコ”スタンダードタイヤを開発せよ!

2009年10月に発売された「ECO WALKER」
2009年10月に発売された
ECO WALKER

2009年10月、環境に配慮した「ECO WALKER(エコウォーカー)」が発売となった。「かるがる、ころがる、低燃費。」をコンセプトに、低燃費性能と基本性能を高次元で両立したNEWスタンダードタイヤである。この新商品の開発のために白羽の矢が立ったのは、ひとりの女性開発者だった。突然、「ECO WALKER」開発チームへ異動となった、その日から完成までの挑戦の記録に迫る!

「目が点」となった開発スタート!

ECO WALKER」の商品化が決定され、開発チームの編成が行われた。2008年8月のある日、「ECO WALKER」の開発チームへの異動を命じられたのが大砂だった。

商品発表会にて、「ECO WALKER」の商品説明を行う開発者・大砂
商品発表会にて、「ECO WALKER」の商品説明を行う開発者・大砂

彼女は、タイヤ開発一筋。ここ10年ほどは新車装着用のタイヤ開発チームにいた。その中で、ハイブリッド車専用のタイヤ開発にも関わっていたことから、その経験と実績を買われての抜擢であった。
しかし、社内の「ECO WALKER」に対する開発コンセプトと商品開発へのリクエストを聞かされた大砂は「そんなバカな!」と目が点になった。
エコタイヤとして、「低燃費と軽量化」の実現といういままでにない高いレベルの要求の上に、安全性と快適性という基本性能もクリアしなければならない。しかも、今回は開発にかける時間が少ないという条件も加わった。
「時間はない! 要求も高い!」。大砂には悩んでいる暇はなかった。クリアしなければならない難題に、さっそく向き合っている自分がいた。

時間との戦いがはじまった!

環境タイヤは2006年頃、各社から発売されるようになっていた。【TOYO TIRES】でも、2007年に「TRANPATH Ne」、2008年に「PROXES CT01e」「PROXES Ne」を発売した。これは、ガソリン価格の上昇に対する消費者の節約志向や、地球温暖化に対する環境意識が高まってきたことが大きい。しかし、環境タイヤは、【TOYO TIRES】をはじめ各社にとってもトップ技術を駆使し、結集されてつくられていた。事実、「PROXES」シリーズは、ウルトラ・ハイ・パフォーマンスタイヤとしてのトップ・ブランドである。それを今回はスタンダードタイヤで開発しなければならない。さらに、追い打ちをかけるように、環境問題から自動車業界もCO2削減活動が活発化。自動車自体もエコカーが注目を集めるというように、時代のニーズがエコへと向かっていった。

急激な市場変化に対応するために開発が急がれたが、社内の要求レベルはスタンダードタイヤの域を超えているかのようだった。例えば「PROXES Ne」の汎用性を持たせたスタンダードタイヤというものや、スタンダードカテゴリーで評判の高い「TEO plus」の性能を落とさずに転がり抵抗の良いタイヤをつくれ、という要求が大砂に課せられた。
従来商品のリニューアルではない。時間がない中で、スタンダードタイヤのさらなる低燃費化への追及をどうするか──。大砂は解析技術を駆使する決断をした。

タイヤを進化させる新設計基盤「T mode」
タイヤを進化させる
新設計基盤「T mode

解析技術を駆使した開発に着手

通常の開発では、「仮説を立て、試作をし、確認する」という作業を数カ月のスパンでまわす。しかし今回は、そのような時間の余裕がない。そこで大砂は、通常の開発でも採用している解析技術に着目した。試作と確認を繰り返せない現状を打破するために解析技術の精度を通常より大幅にアップすることで、時間の制約に挑むことを決めた。

さまざまなシミュレーションによって、解析を行い開発が進められていった。
さまざまなシミュレーションによって、解析を行い開発が進められていった。

【TOYO TIRES】には、新タイヤ設計技術「T mode(ティーモード)」がある。コンピュータを駆使したタイヤの挙動や構造を解析する最新システムだ。同様のドライビングシミュレーションと融合することで解析性能を高めたこの独自のシステムにより、タイヤの「構造・パターン・ゴム配合」の最適化を図ることができる。
このシステムで、「いかに短時間で、最適化なプロファイルに到達するか」という工夫のために、寝る暇を惜しんで解析に没頭していった。

相反する矛盾を融合する難題

ECO WALKER」は、“かるがる、ころがる、低燃費。=地球に優しく、軽やかにウォーキングする”をコンセプトにし、地球温暖化防止をテーマに安全性・快適性・省資源を追求している。つまり、環境配慮と基本性能を高次元で両立したNEWスタンダードタイヤである。そこで、ポイントになるのが「低燃費性能向上」と「軽量化」。しかしここには、相反する矛盾が山積している。それらを一つひとつクリアしていかなければ、「ECO WALKER」は誕生しない。

たとえば、軽量化。タイヤを軽くすることはいくらでもできるが、安全性に関わる高剛性を保ちながら、安定性とのバランスを追求した軽量化とは? 低燃費性能向上を図りつつ、安全性を確保できるのか? このようにいくつもの難題が大砂を待ち受けていた。個別の課題をクリアしつつ、タイヤとしてのトータルな課題も解決していく。幾通りものパターンと組み合わせを想定しながら、解析、試作によって検証を繰り返す日々。そう、ゴールは見えている。「環境配慮と基本性能を高次元で両立したNEWスタンダードタイヤ」だ。しかし、その道程は真っ直ぐではなく、長く曲がりくねった道のようであった。突き進むためには、タイヤへの愛情が必要だった。

大砂は、小学校の時から算数が好きな少女だった。成長とともに、算数から数学、そして理科も好きになっていき、将来は理系の会社への就職を考えるようになった。さらに、男兄弟にはさまれていたこともあり、活発な幼少期を送っていたことから、もともとクルマが好きだったという。400cc のバイクに乗っており、大学入学当初は、バイクサークルに所属していた。その後、自動車部に入り、ラリーに夢中になった。そこで「こんなタイヤがあったらいいね」という話を部員たちとしているうちに、ラリータイヤをつくってみたいと思うようになった。たまたま【TOYO TIRES】に入社していた先輩の女性がいたので、話を聞いて入社することを決めた。「自分の中では自然な流れで、気がつくとタイヤ開発の仕事をしていた」という大砂。

タイヤへの思い入れと愛情が人一倍強い開発者のひとりである大砂でも、「最初、タイヤづくりは面白かったが、どんどん難しいと思うことが増えた」と立ち止まりたくなる時がある。「でも、その分、やり甲斐がある」と大砂は前向きに考える。今回の「ECO WALKER」開発で、さらにその思いは強くなった。

まさに、寝る暇もない状態で取り組んでいった開発。時間との闘いの中で、少ない睡眠時間の間でも、開発している夢を見るという状況に追い込まれていく。夢の続きは現実が待っている。難しさとやり甲斐のはざまにありながら、次々と決断に迫られていく──。

「エコウォーカー 開発秘話 後編」はこちら

(2009年12月掲載)



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