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第25回 「エコウォーカー」開発秘話 後編 デザインまでもエコ!徹底したこだわりを注ぎ込む

「ECO WALKER」開発者・大砂
ECO WALKER
開発者・大砂

悩んで立ち止まっている時間はなかった。「低燃費性能向上」と「軽量化」を最大のポイントにしたNEWスタンダードタイヤ「ECO WALKER(エコウォーカー)」の開発は、省資源化や安全性、快適性など基本性能と向き合うことでもある。大砂は、いままでの経験とノウハウ、そして【TOYO TIRES】が蓄積してきた情報・技術を駆使して、仮説を立て、解析を繰り返し、次々と課題をクリアしていった。

「エコウォーカー 開発秘話 前編」はこちら

新コンパウンド「バージョン ECO WALKER」を開発

ECO WALKER」開発者の大砂は、「低燃費性能向上」に欠かせない「ころがり抵抗低減」を実現するため、コンパウンド開発に着手した。先行商品の「PROXES CT01e」や「PROXES Ne」でも低燃費コンパウンドを採用することで、効果を発揮していたからだ。低燃費コンパウンドは、高反発ゴムであり、よく跳ねることからエネルギーロスを小さくすることができる。その結果、ころがり抵抗が低減する。

耐摩耗カーボンとシリカを最適化。低燃費と摩耗性能を両立するために新開発された低燃費トレッドコンパウンド。
耐摩耗カーボンとシリカを最適化。低燃費と摩耗性能を両立するために新開発された低燃費トレッドコンパウンド。

従来の低燃費コンパウンドの配合を活かしつつ、新配合の「ECO WALKER」バージョンの開発にとりかかった。求められる性能は、「ころがり抵抗低減」に加え、「耐摩耗性」と「ウエット性」の3つ。しかし、課題があった。「耐摩耗性」を向上させると「ウエット性」が落ちるなど、バランスを取ることが難しいのだ。試行錯誤の連続となり、「ECO WALKER」用として、バランスの良い新配合が決まるまで、数ヶ月もの時間を要した。こうして誕生したコンパウンド「バージョン ECO WALKER」を「ころがり抵抗低減」に一番効果を発揮できるトレッド部に採用。それが「低燃費トレッドキャップコンパウンド バージョン ECO WALKER」である。

軽量化と剛性の両立。ころがり抵抗低減への挑戦

「ころがり抵抗低減」には、もうひとつポイントがある。それは「軽量化」だ。タイヤを軽量化することで、スムーズな発進(ころがり抵抗低減)が図られる。しかし、「軽量化をしたというと、ほとんどの人が想像するのは“剛性が落ちるのではないか”という心配」と話す大砂の答えは、「プロファイルと構造で、それをカバーする」であった。

軽量化を図りながら、しっかり構造を両立。低燃費と基本性能を両立した軽量化構造である。
軽量化を図りながら、しっかり構造を両立。
低燃費と基本性能を両立した軽量化構造である。

だが、実際には簡単にいかなかった。ひとつの構造にまとめるためには、幾つものパターンがあり、組み合わせがある。「こちらを立てれば、あちらが立たず」状態の日々――。軽量化を実現しながら、高剛性を保ち、安定感もあるバランスの良いタイヤを目指し、次々とシビアに判断をくだしていく。その結果が、トレッド幅の最適化により、ころがり抵抗を低減した「軽量低燃費最適プロファイル」や高硬度化することによって剛性を維持し操縦安定性を向上させる「高硬度プライトッピング」、リムから伝わる力に対して硬くすることで剛性を保つ「超高硬度ビードフィラー」などである。これらをひとつにまとめることで、「軽量化しながら、しっかり構造」を実現したのだった。

パターンデザインでもエコをアピール

タイヤのパターンデザインは、見た目の格好良さだけではなく、その前提として機能性をクリアしなくてはならない。基本性能である「偏摩耗性」、「静粛性」、「操縦安定性」を配慮したパターン設計が求められる。

葉の葉脈をモチーフとしたパターンデザインを採用。環境配慮タイヤならではのエコロジカルなデザインが特徴。
葉の葉脈をモチーフとしたパターンデザインを採用。環境配慮タイヤならではのエコロジカルなデザインが特徴。

機能性との両立が必須のパターンデザインにも、大砂は「エコをイメージした、視覚的にもアピールできるデザイン」にこだわった。洗練や力強さという格好良さが求められることが多いタイヤではあったが、柔らかい曲線を主としたパターンによって、優しい感じのイメージをタイヤに反映させること。さらに、エコをアピールするために、モチーフを「葉っぱ」に決めた。
だが、問題があった。パターンが弱いと摩耗が促進されてしまう。接地性を均一にしないと同様に摩耗が促進される。いくらパターンが良くても、いくらコンパウンドの配合が良くても、接地性が悪いと問題が生じてしまう。「葉っぱ」モチーフをいかすために、大砂は接地解析に取り組んだ。

その結果、軽量化を図っている「ECO WALKER」は、トレッド幅が狭いが、「葉っぱの葉脈」をモチーフとしたパターンをつなげることで「偏摩耗性」、「静粛性」、「操縦安定性」にも配慮することができた。
「視覚的なアピールと機能性の両立ができた!よし、いける!」。「ECO WALKER」開発のゴールまであと少し。大砂はさらなる課題へ取り組んでいった。

低ノイズ化にも、抜かりなし!

大砂は常々、「“安全”と“快適”が絶対。これがないタイヤを世に出してはいけない」と考えている。「ECO WALKER」にも安全性はもちろん、快適性につながる「低ノイズ化技術」をつぎ込んで、ハイレベルな静粛性の実現を目指した。
ノイズは、荒れた路面から生じる「ロードノイズ」とタイヤから生じる「パターンノイズ」の2つがある。「ロードノイズ」を低減するために、振動を吸収するゴム「ノイズプロテクションシート」を採用した。「パターンノイズ」の低減には、パターン位置の最適化とともに「サイレントウォール」を採用。タイヤパターンと構造を作り上げる段階で、低ノイズ化にもしっかり取り組んでいた。

そしてついに、テストコースで試される時が来た。

携帯電話を片手に最終テストにのぞむ!

テストコースは、宮崎。東京ドーム約3個分の規模を誇るテストコースだ。最終スペックテストにのぞむ大砂は、携帯電話を片手に握り締め、ドライバーとともにテスト車に乗り込んでいた。時間がないため、このテストでOKにならなければ・・・。そう、再度調整が必要となった場合は、テストコースからすぐさま工場に電話をしなければならない状況だった。

助手席に乗っていた大砂は、テストコースでの走りから「そのしっかりした感じ、そしてバランスが取れていることを実感できた」。そこには、街中でクルマを運転する女性を意識した女性開発者ならではの視点も加味して感触が確かめられていた。目標は達成された。「自信を持って、世に出すことができる」。大砂は、安堵感と喜びに包まれていた。

“エコ”スタンダードタイヤ誕生

子どもの送り迎えなどで自転車に乗っている時、「段差で入力を感じたり、空気圧を変えて乗心地、運動性を試してみる、などついつい疑似体験をしてしまう」という大砂。毎日の暮らしの中でもタイヤのことを考えてしまう事が多いが、やはり癒されるのは家族と過ごす時間。
ECO WALKER」開発中も家族の理解があってこそ開発に集中することができた。

そして2009年10月、厳しい基準をクリアした「環境配慮タイヤ」であり、“エコ”スタンダードタイヤとして「ECO WALKER」が発売された。
たが、大砂の挑戦は終わらない。「もっと進化した、地球環境に対応できるタイヤをつくりたい」、さらに「学生時代に思ったラリータイヤの開発や、例えば子どもたちが描いた恐竜の絵をデザインパターンにしたタイヤなど、今までにないものも開発してみたい」。
大砂のタイヤへの思いは尽きない。
そう、大砂には、まだまだ開発したいタイヤがたくさんあるのだ。

(2010年1月掲載)



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