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第27回 「プロクセス1」開発秘話 後編 未だかつてない、最高のタイヤづくりへの挑戦!

「PROXES 1」の開発チームリーダー 上田
「PROXES 1」の
開発チームリーダー 上田

【TOYO TIRES】のNEWフラッグシップタイヤとして開発が始まった「PROXES 1(プロクセス・ワン)」。開発者として「やれることは何でもやってみろ!」という今回の開発スタンスは、新たな技術への挑戦、そして次から次へと出てくる課題との戦いを意味するものであった。「PROXES 1」の開発チームリーダー・上田は、この開発に導かれた運命を感じながら、開発者魂に火をつけていった。

「プロクセス1 開発秘話 前編」はこちら

不思議な運命、縁とは?

上田は、スーパーカーブーム世代であり、18歳で自動車運転免許をとってから、ドライブもクルマ自体も大好きだ。当時、友人から「いいタイヤがある」といわれてトーヨータイヤを紹介されたこともあり、また就職の際に、先輩が【TOYO TIRES】にいたのが縁で入社。大学の学部が畑違いなので開発への配属はないだろうと思っていたら、開発へ。しかも、配属されたのが当時あった「新車ポルシェ用のタイヤ開発チーム」だった。単なるクルマ好きの知識だけでは通用せず、クルマの構造等について猛勉強の毎日。ポルシェに触ることも、実際に乗ることももちろんない、ただただ勉強の日々であったが、一番乗ってみたいクルマがポルシェだった上田にとっては苦にはならなかった。

その後、国内の新車装着用タイヤの開発を12〜13年ほど手がけた。新車装着用タイヤの開発では「開発のスピード、メーカーの要望に応えること」などが求められたので、細かく・幅広い知識と経験、スキルを身につけることができた。
そして、一般向けタイヤの開発担当になった最初の商品がこの「PROXES 1」である。
開発チームリーダーの上田が“一番好きで乗りたかったポルシェ”をはじめ、ヨーロッパのスポーツカーのオーナーや関係者に認められる最高レベルのタイヤ開発だ。開発のチームリーダーにと依頼があった時には、驚きとともに喜びがあった。入社直後のポルシェ・チーム配属時も、そして今回も、上田自身は希望を出してはいなかった。不思議な縁、運命的な縁が動き始めていた。

サーキットで実証した最高性能

今回の開発でも、タイヤの挙動や構造を解析する【TOYO TIRES】独自のシミュレーションシステム「T mode(ティーモード)」を採用した。さらに今回は、宮崎県にある【TOYO TIRES】のテストコースだけではなく、大分県にある『オートポリス・サーキット』でのテストを繰り返した。「PROXES 1」がサーキット走行も考慮しているタイヤのためであるが、実際、国内のサーキットを使用してのテストはスポーツ走行専用タイヤを除いて、ほとんどない事である。

「T mode」での解析結果から試作タイヤをつくり、サーキットでテスト走行。ドライバーの横の助手席に乗る上田。走りはじめた瞬間に「これではダメだ!」とわかる時も。また、数値化できない感覚的なものによって、しっくりとこないことがしばしばあった。テスト走行後にテストドライバーからは様々な感想や意見、問題点が出された。開発者の上田には「数値だけではなく、人間の感覚も活かすことで最高のパフォーマンスを手に入れることができる」という考えがあった。解析だけには頼らない、トライ&エラーが重ねられていった。

ポルシェに乗れることを楽しみにしていた上田だったが、そんなことはいつの間にか忘れていた。最高のタイヤを目指して、開発に没頭していたのだった。

非対称によって自由度が高まったパターン

非対称パターンを採用することで設計の自由度が高まる。それは、タイヤ性能の向上に大きな効果を発揮する。フロントタイヤの基本性能は「コーナリング性能」と「ブレーキ性能」。そこで、INSIDEに「ブレーキ性能」を高めるパターン設計を施し、OUTSIDEは、ハイグリップな構造によって高い「コーナリング性能」を実現し、同時にシャープなハンドリング性能も重視するパターン設計を行った。

インターロッキングトレッドブロックス
インターロッキング
トレッドブロックス
高剛性リブ&クーリングディンプル
高剛性リブ&
クーリングディンプル

さらに、ハンドリング性向上と排水性向上、耐摩耗性のための「マルチファンクションテーパー」やコーナリング性向上、直進安定性向上のための「インターロッキングトレッドブロックス」、接地性の最適化と放熱効果により熱ダレを抑制する「高剛性リブ&クーリングディンプル」などの技術を採用し、グリップの向上やハンドリング性の実現を成功させた。

上田を中心に、“最高のパフォーマンスを備えたタイヤ”が確実に具現化されていった。

トレッドコンパウンドも「PROXES 1」専用設計

トレッドコンパウンド構造にも、初めての試みに挑戦した。フロントとリアで専用コンパウンドの開発を決めたのである。
フロントサイズは、INSIDE用に「ドライグリップ重視コンパウンド」、OUTSIDE用に「コーナリング重視コンパウンド」、そしてベース部分には「高弾性・低発熱ベースコンパウンド」を組み合わせたトリプルトレッド構造を採用した。
リアサイズには、操縦安定性向上のために「新設計 超高硬度コンパウンド」をシングルトレッド構造で採用するなど、それぞれの役割と性能を最大限に引き出すためにコンパウンドの開発・設計にも取り組んだ。
しかし、新しい挑戦と最高レベル実現のために行ったトレッド構造への挑戦も、そう簡単には行かなかった。開発途中のテスト走行でトレッドのゴムが飛んでしまうということもあった。すべての役割を実現するためには度重なるトライ&エラーが必要となった。地道な開発の積み重ねで誕生したトレッド構造である。

トレッド構造

最終テスト走行を向かえて

「これで、すべて完璧だ! 大丈夫だ」と言い聞かせて最終テスト走行にのぞんだ上田。ただし、テストの結果が出るまで確証は持てなかった。
しかしテスト走行がはじまると、走り出したポルシェが「いいタイヤだ」と褒めてくれているように思えた。上田は安堵した。「今までの“プロクセス”を超える最高レベルのタイヤにやっとたどり着くことができた」。嬉しさと達成感が上田をはじめ開発者たちを包んでいた。

タイヤ開発に終わりはない!

【TOYO TIRES】の技術を結集して開発した「PROXES」シリーズの最高レベルの「PROXES 1」。今やれることはすべてやった、という達成感はある。しかし上田は「もっともっと【TOYO TIRES】ならではのタイヤをつくりたい。タイヤの開発に終わりはない」と、すでに次のタイヤ開発について考えている。しかもそのタイヤは開発者の自己満足ではなくお客様に喜んで頂けるタイヤということが大前提だと言い切る。
「いつもタイヤ開発のことを考えている。そこには、お客さまがいなくてはならない。お客様が望むタイヤとは何かを追求する。この考えや取り組みは、【TOYO TIRES】の開発者全員に共通していることだと思う」と話す。

上田をはじめ【TOYO TIRES】の開発者たちには、ひとつのアイデンティティというか、受け継がれているDNAのようなものがある。それは、「お客様が安全に安心してタイヤを使えること」を大前提に、「プラスアルファの価値創造」や「走りへのこだわり」などへの挑戦である。【TOYO TIRES】オリジナルとは、このように、開発者の自己満足ではなく、お客様の満足度を最優先した日々の開発から生まれるのだろう。お客様あっての開発。そう、今日も新たな課題と終わりのない挑戦への取り組みが続けられているのである。

(2010年9月時点)



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