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第28回 「トランパスmpF」開発秘話 前編 継承と進化を極めた新時代のミニバン専用タイヤ

2011年3月に発売された「トランパスmpF」
2011年3月に発売された
「トランパスmpF」

2011年3月、【TOYO TIRES】のミニバン専用タイヤ「トランパス」シリーズの最新モデルとして発売された「TRANPATH mpF(トランパス・エムピーエフ)」。
市場でも、その完成度の高さが評価を受けた偉大なる先輩「トランパスMP4」を超えたそのタイヤは、どのように開発されたのか?相反する操縦安定性能と低燃費性能を高いレベルで両立させたアイデアとは?そこには理想に燃えタイヤづくりに情熱をもった若いチカラがあった!

「次のなんていらない?」立ち塞がる大きなプレッシャー

当初から開発の難航は予想された……。今回開発をおこなうのは、ミニバン専用タイヤとして展開する主力商品「トランパス」ブランドの5代目となるタイヤ。ただでさえ失敗が許されない商品である上に、偉大な先輩=「トランパスMP4」は市場から高い評価を受けていたのだ。

「トランパスmpF」の開発担当 永井
「トランパスmpF」の開発担当
永井

そんな難しい今回の開発担当として白羽の矢が立ったのが、なんと新商品開発の主担当自体はじめてという、開発チーム若手の永井だった。ミニバンに乗ったことはおろか「トランパス」ブランドのことすらあまり詳しくないという、真っ白な状態でのスタートだった。

そんな永井が最初に手をつけたのが、全国約20店舗のタイヤショップでのヒアリングだった。ミニバン専用タイヤを一から考え直す為には、現場から「今ミニバン専用タイヤに求められる性能」を知ることが重要だと思ったからだ。…しかし、ここで永井は早くも偉大な先輩の影を痛感することになる。

現場の担当者たちの声は一様にこうだった…「トランパスMP4はとてもいい商品だよ」。返ってきたのは「MP4」を賞賛する声ばかり。なかには、「次の商品なんているの?」という声までも。
永井は悩んだ、「本当に新しいトランパスは必要なんだろうか?」と。

高速ドライブが教えてくれた「ミニバンに必要なもの」

悩んだ末、永井はひとつの結論に達する。
「現場の人たちの声は確かに大事だ…でも商品開発に大切なのはそれだけじゃない」
言われたものを作るのではなく、タイヤメーカーとして世の中に対して何が出来るのか、何が提案できるのかを考えて、それをカタチにする。まずは自分自身がミニバンに乗ってどう思うのか、そこから初めてみようと……。
そして、本格的な開発はここからスタートすることになる。

思い立った永井は、早速レンタカーを借り、ミニバンで高速道路に向かった。長距離を走ることで見えてくるものが必ずあるはず、そう思ったからだ。借り受けたクルマにトランパス以外のタイヤが装着されていたのも都合が良かった。
そして、高速道路に乗った永井はそこで、開発のヒントとなる貴重な体験をすることになる。その日は風が強い日だったこともあり、レーンチェンジやカーブの度に風に煽られてミニバンの車体がフラフラとするのだ。それは永井にとってまったく予想していなかった車の挙動だった。永井は当時を振り返り、「100km/hどころか80km/hで走るのもやっとだった」と語った。

ほうほうの体でなんとか帰りついた永井は、トランパスが何故市場から評価を得ることができたのかを痛感していた。「やっぱり大切なのはしっかり感だ…これ無くしてミニバン専用タイヤはありえない。まずはこのしっかり感をより高いレベルへと向上することが、新しいトランパスの最低条件だ。」

五代目は「5」ではなく「F」、単なる“後継商品”には留まらない!

「mpF」の“F”は、「Force(力強さ、しっかり感)」「Fuel save(低燃費)」「Family(家族のために)」「Fun(運転を楽しむ)」「Five(TRANPATHシリーズ五代目)」という5つの「F」にちなんでいる。
「mpF」の“F”は、「Force(力強さ、しっかり感)」「Fuel save(低燃費)」「Family(家族のために)」「Fun(運転を楽しむ)」「Five(TRANPATHシリーズ五代目)」という5つの「F」にちなんでいる。

そのころ、新しいトランパスに対する社内からのプレッシャーも日々高まっていた。まだ商品名も決まっていないのにも関わらず、「“MP5”ってどうなってるんだ?」と聞かれることもしばしばであった。

そんな声を耳にする度に、永井は「過去の商品を改良しただけの単なる後継商品はつくりたくない…MP4の良さを継承・向上した上で、さらにもう一歩何か進化した商品にしなければ」と開発への意欲を新たにしていた。

「単なる後継商品はつくりたくない」…、永井のその想いは後に決定することになる「MP5」でも、「MPV」でもない、「mpF」というネーミングにも込められることになる。

「進化」するトランパス、環境への提案

環境への意識が高まる中、タイヤメーカーとして次期商品に「低燃費」というコンセプトを提案することが大切だった。
環境への意識が高まる中、タイヤメーカーとして次期商品に「低燃費」というコンセプトを提案することが大切だった。

単なる後継商品に留まらないための「進化」とは何か?
永井たちのチームには一つのアイディアがあった。

折しも当時は高速道路無料化などが叫ばれた時期で、今後長距離を走行するためのニーズが高まることは確実視されていた。またその頃、エコバッグの利用やマイ箸など、環境への意識が高まりつつあるタイミングだった。

導きだされた彼らの結論は「低燃費」だった。「世の中がエコへと向かう一方で長距離走行が増えていく中、タイヤメーカーとして社会に対して貢献できること…しっかり感を向上した上で環境にも配慮した『低燃費』なミニバン専用タイヤ。これこそ次世代のトランパスのコンセプトにふさわしいじゃないか!」

こうしてコンセプトは決定した。
しかしそれは同時に、後に永井を悩ませることになる大きな問題が、立ちはだかった瞬間でもあったのだった。

継承すべきは培った「しっかり感」

INとOUT側で異なる「mpF」のブロックパターン
INとOUT側で異なる
「mpF」のブロックパターン

リブ基調が特徴的なパターン
リブ基調が特徴的なパターン

開発に当たって永井が一番に考えたのは「しっかり感」の継承と向上であった。永井には初めてMP4の設計構造図を見た時から考えていたことがあった。「『MP4』はバランスの取れた非常に完成度の高いタイヤだけれど、その良さを継承した上で最新の技術を用いてタイヤ全体をより最適化すれば、トランパスの能力をもっと高めることが出来るはずだ!」と。

しっかり感を向上させるにあたり、チーム内ではあらためてトランパスシリーズ最大の特徴である「しっかり感」とは何なのか?ということが話し合われた。「ブレーキを踏んだ時の効き感」や「コーナーでのグリップ感」などが上げられたが、それに加えて「mpF」では永井自身が体感した高速走行時の操縦安定性能に着目することが決まった。

まず技術的に継承を決めたのはTRANPATHのお家芸ともいうべき、“非対称パターン”だった。「mpF」では、この非対称パターンを採用し、しっかり感を向上させることに注力。ブレーキを踏んだときに接地面積が大きくなりやすい傾向にあるIN側ではウェット性能と操縦安定性能を、OUT側では操縦安定性能を追求したパターンを採用することで、より高次元の操縦安定性能を実現。また「MP4」ではブロック基調のパターンだったのに対し、「mpF」ではリブ(肋骨)基調のパターンを採用することでパターンの剛性を高め、より「しっかり」させることにも成功した。

さらに、新技術としてIN側とOUT側のショルダー部に「インターロッキングリブ」を配置。“噛み合う”“支えあう”という意味のこの構成は、コーナリング時やブレーキング時のブロック剛性の低下を抑制。さらにコーナリング時のブロックの倒れ込みによって剛性が低下することを抑制する「溝底補強ブロック」技術を、OUT側の一番外側のショルダーの溝の底部分に新たに採用し、しっかり感の強化に成功している。これに加え、新しいコンパウンド配合を採用することで、徹底的に「しっかり感」を追求。高速走行時のふらつきを抑えるよう設計された。パターン、構造、コンパウンド配合の最新技術を組み合わせることで、「mpF」はさらなる「しっかり感」を獲得することができたわけだ。

こうして「トランパス」のDNAに脈々と流れる「しっかり感」を継承し、向上することに成功した永井たちであったが、実はコンセプトとなった「低燃費」は「しっかり感」と相反する性能だった!ここから「低燃費」の実現という高い壁を越えるための永井のさらなる努力が始まった……。

「トランパスmpF 開発秘話 後編」はこちら

(2011年7月時点)



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