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第30回 「ナノエナジー1」開発秘話 前編 日本初※1低燃費性能グレード「AAA-b」への挑戦!

2012年2月に発売された新低燃費タイヤ「NANOENERGY 1」
2012年2月に発売された
新低燃費タイヤ「NANOENERGY 1」

2012年2月、TOYO TIRESの新低燃費ブランド「NANOENERGY 1(ナノエナジー・ワン)」が発売された。それは、TOYO TIRESが誇る技術の粋を集めた「高い低燃費性と安全性を両立」した、次世代低燃費タイヤの誕生でもあった。
しかし、「低燃費性」と「安全性」の高水準での両立となると、言葉でいうほど簡単なものではなかった。

まだ誰も達成していないタイヤへの挑戦!

2010年(平成22年)に「転がり抵抗性能」と「ウェットグリップ性能」の両性能をグレーディングシステム(等級制度)に基づいて低燃費タイヤを定義するラベリング(表示方法)制度※3が導入された。これにより、タイヤメーカー間のさらなる技術開発競争が予想されていた。
TOYO TIRESは、すでに「SUPER ECO WALKER(スーパーエコウォーカー)」で、日本初※2「転がり抵抗性能」最高グレード「AAA」を達成していた(グレーディングは「AAA-c」)。

「SUPER ECO WALKER」開発中に、「その先へ!その上へ!」として開発を目指したのがグレーディング「AAA-b」のタイヤ「NANOENERGY 1」であった。この開発担当リーダーに抜擢されたのが、川上だ。
彼は、入社以来ずっと新車装着用タイヤの開発をしてきた。今回、「NANOENERGY 1」の開発のために異動となり、初めて国内市販用商品を担当することになった。
「最高水準のグレーディングをクリアするというハードルが高い仕事だからこそ、面白い」と挑戦を楽しむかのように仕事に取り組みはじめた川上だったが、まだ誰も達成していないタイヤへのチャレンジは、想像を超える苦難の連続となった。

最高水準の低燃費タイヤ開発への取り組み

日本初となる低燃費性能グレード「AAA-b」をクリアするため川上はまず、市場調査を行った。低燃費タイヤのグレーディングに関するお客様の認知度や反応を知ることが重要だと思ったからだ。
関東や関西のタイヤショップやカーディーラーをまわって調査をした結果に川上は戸惑った。

「NANOENERGY 1」開発の話を熱く語る開発担当リーダーの川上
「NANOENERGY 1」開発の話を熱く語る
開発担当リーダーの川上

「ラベリング制度についてのお客様の認知度は10%あるかないか。しかも、タイヤ選択の際にも、グレードだけで購入決定をしているお客様は少なかった。こんなに浸透していないのに、訴求ポイントになるだろうか?」とグレード訴求に疑問を感じることとなった。グレード以外の付加価値をプラスする方向を模索する必要性があるかもしれないという考えが頭によぎった。

しかし、ブレている時間はない。与えられた期間は18ヶ月しかなかった。開発の関連部署は同時進行となる。その際に必要となるのが商品コンセプトである。あれもこれもとプラスしていくと、ポイントがボケる。各部署の担当者がひとつの方向に向かって、突き進むことができなくなってしまう。
コンセプトは、低燃費グレード「AAA-b」の可視化で行こうと、川上は腹をくくった。それはグレードを訴求し続けて認知してもらうこともタイヤメーカーの使命のひとつであると感じていたからだ。お客様へ「高い低燃費性と安全性を両立したタイヤ」を届けるためにも。

1+1が2にならないのがタイヤ

TOYO TIRESは、「転がり抵抗性能」の最高グレード「AAA」を「SUPER ECO WALKER(スーパーエコウォーカー)」で達成している。さらに、「TRANPATH mpF(トランパス・エムピーエフ)」で「ウェットグリップ性能」の「b」を達成していた。
それぞれの性能を達成できる技術や設計などをすでに持っている。この2つをあわせれば、高い低燃費性能と安全性を両立させた「AAA-b」タイヤは誕生するはずだ。

しかし、「1+1=2」というように簡単に行かないのがタイヤ開発である。仮説が必ずしも思ったような結果になるとは限らない。
そもそも、「ウェットグリップ性能」を上げると、「転がり抵抗性能」は下がってしまう。まさに、「ウェットグリップ性能」と「転がり抵抗性能」は対極にあり、相反する性能なのだ。
それぞれの良いところだけをピックアップして、融合させるために、一つ一つ、様々な角度から組み合わせを考え、トライ&エラーを繰り返し、地道に着実に結果を積み上げていく作業が延々と続く。

ゴールは、最高グレードの「AAA-b」を達成するタイヤづくり。
そう、ゴールは明確だ。だが、ゴールにつながる道のりが霧につつまれていた。

目指すは、低燃費タイヤとしての「AAA-b」グレードのこのマーク。

低燃費タイヤ「AAA-b」グレード

3つに絞り込んだ達成への課題

課題は、大げさにいえば数えきれないほどあった。何を、どこから手をつけていけばいいのか……。それらを分類して道筋を立てない限り、この開発は終わらないと川上は考えた。
TOYO TIRESには、技術やノウハウはある。解決すべき課題の優先順位を明確にすれば、ゴールへと着実に近づける。

そこで、課題を3つに絞り込んだ。

1つ目は、トレッド配合により、転がり抵抗の悪化を最小限に抑えウェットグリップ性能をできる限り上げること。
2つ目は、パターンにより制動時の接地圧を均一化させ、ウェットグリップ性能をさらに上げること。
3つ目は、構造により転がり抵抗を低減させること。

開発コンセプトは、「低燃費性能とウェットグリップ性能を高次元での両立」であり、開発目標グレード「AAA-b」をクリアすること。川上はそのための課題としてこの3つをあげた。

「NANOENERGY 1」の開発に関わる各部署のスタッフには、それぞれのアプローチや考え方がある。その中で、コンセプトと課題を共通認識として持つことで、開発は一気に加速していくこととなる。

しかし、方向性が決まったからといって、ゴールへ続く道がひらけてきたわけではなかった。問題はそう簡単にはクリアできなかった。
この先、難関といえるポイントがいくつも行く手を阻んだのだ。

※1 日本初とは、「低燃費タイヤ」のラベリング制度におけるAAA-bグレード商品の発売(2012年2月)のことです。
※2 日本初とは、「低燃費タイヤ」のラベリング制度におけるAAA-cグレード発表(2010年4月)のことです。
※3 低燃費タイヤラベリングの詳細はこちら

「ナノエナジー1 開発秘話 後編」はこちら

(2012年2月時点)



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