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プロジェクトTOYO

第33回 「プロクセスT1 Sport」開発秘話 後編 
乗ればわかるプレミアムな走りと上質な快適性能。

PROXES T1 Sport」は、欧州の自動車専門誌で推奨(Recommended)を獲得し、そしてアウディに標準装着されたことにより、欧州で認められたウルトラハイパフォーマンスタイヤとなった。それは、「ドライ/ウェット性能を高次元で両立」し、「プレミアムスポーツタイヤに相応しい快適性」を同時に実現した【TOYO TIRES】の確かな技術力への評価でもあった。
難解なパズルを解くように、様々な角度から開発を進める。「PROXES T1 Sport」完成までの挑戦の日々に迫る!

「プロクセスT1 Sport 開発秘話 前編」はこちら

タイヤの本質を見つめ、インとアウトの役割分担へ!

高い次元でのドライ/ウェット性能を実現するため、何をどうすべきなのか? その答えを見つけるため、まずタイヤをその本質から見つめ直すことになった。

非対称パターン設計で、インサイドとアウトサイドそれぞれに役割を分担。
非対称パターン設計で、
インサイドとアウトサイドそれぞれに役割を分担。

解決のヒントは、「走り」そのものの中にあった。
自動車用タイヤは、『走行時』、『制動時』、『コーナリング時』など、それぞれの状況においてタイヤのインサイド/アウトサイドそれぞれの働きが異なる場合がある。実際の走行シチュエーションを想定した上で、それぞれに最適な役割を持たせてはどうか。ウェット性能とコーナリング性能の両立は非常に難しい課題であったが、「非対称パターン」を用いて役割分担を行うことで解決できるのではないか。
その仮説を元に、インサイドにウェット性能を、アウトサイドにコーナリング性能を重視した非対称パターン設計を採用することになった。

インサイドはウェット性能重視をポイントにワイドな溝を入れ、アウトサイドはコーナリング性能を重視するための大きなリブを入れる。溝の幅は何ミリが最適か、大きなリブの入ったブロックの剛性をどのように確保するか。最高のパフォーマンスを求め、いろいろなパターンやさまざまな組み合わせを、微調整をかけながら、繰り返し繰り返し改良を行っていった。

非対称パターン設計を実現するために!

ノッチ形状
ノッチ形状

インサイドはウェット性能を高めるために、高剛性リブ&ノッチ形状を採用した。特に、ノッチはパターンのポイントとなった。

インサイドへ細かくたくさんのノッチを入れることで、接地しやすく排水効果も高い構造となり、ブレーキ性能が向上した。ごくごく細部の工夫ではあるものの、その効果は大きいものになった。


ワイドブロック
ワイドブロック

アウトサイドはコーナリング時の負荷に耐えられるよう、主溝ではなく幅が狭い副溝を入れ、少しでも溝を浅くし、ブロック全体のパターン剛性を上げた。さらに、溝を浅くするためトレッド・ウェア・インジケーター(スリップサイン)を入れなかった。アウトサイドをひとつの領域と考えワイドに捉えることで、ブロック全体としての剛性を上げる設計を施した。この「ワイドブロック」によって、コーナリング時の高度なグリップ性能が生まれた。


ワイドストレートグルーブ
ワイドストレートグルーブ

さらに、欧州でのタイヤ評価で大きなポイントとなる耐ハイドロプレーン性能をアップさせるため、太い溝を入れ排水性を確保した。しかし開発時に、溝と剛性のバランスが問題となった。排水性を上げるために溝を大きくすると剛性が落ち、剛性をアップさせるためには、溝は小さい方がよく、バランスが非常に難しい。それを解決したのが3本溝の「ワイドストレートグルーブ」だ。直進時はアウトサイドよりインサイドの方が接地面積が大きい。そこで、インサイドを「ワイドストレートグルーブ」で排水性能をアップした。3本溝とそれぞれの幅が、性能アップを実現するカギとなっている。


ワイドセンターリブ
ワイドセンターリブ

また、センターには、高速走行での安定性とハンドルを切った時のレスポンス向上のため、「ワイドセンターリブ」を設けた。直進時に一番長く路面に接するセンター部分の剛性をアップすることで、高速スタビリティとレスポンスをアップしている。

インサイド、アウトサイド、そしてセンターと、それぞれの特性を活かしながら最適な設計パターンを実現させるため、数えきれないほどのパターンや組み合わせの「仮説、検証、分析」を繰り返した。


タイヤを知り尽くした【TOYO TIRES】ならではのノウハウと技術が詰まっている。
タイヤを知り尽くした【TOYO TIRES】ならではのノウハウと技術が詰まっている。

新配合の高硬度コンパウンドを採用!

トレッド構造
トレッド構造

高次元のドライ/ウェット性能を発揮するためには、トレッド配合も重要となる。高硬度のコンパウンドを保ちつつ、柔軟性も発揮しなければならない。ここでも、相反する性能を両立させることが求められた。
トレッド配合を担当したタイヤ材料部の遠近(トウチカ)は「シリカ配合の最適化とスペシャルボンディングエージェントの配合で課題はクリアできる」と考えていた。シリカ配合の最適化によってグリップ力をアップし、スペシャルボンディングエージェントで剛性をアップするのだ。

遠近は入社4年目の若手社員である。「プロクセスT1 Sport」が初めて開発に関わったタイヤだ。遠近は、かつての開発者がポルシェなど欧州のハイパワー向けタイヤの「PROXES 1」にスペシャルボンディングエージェントを使用していたことをを応用した。だが、完成までの道のりは簡単なものではなかった。「配合比を微妙に変えて、何度も試作をしてもらい、検証と分析を繰り返す。その度に、足りないところはどこか、問題点はどこにあるかを探って改良していく日々でした。」遠近は、そう振り返る。
検証と分析によって、剛性を向上しつつ柔軟性も同時に向上させ、高次元でのドライ/ウェット性能を発揮できる「高硬度コンパウンド」を完成させたのだ。

欧州のハイパフォーマンスカーを受け止める高剛性

タイヤ材料部の遠近(左)と開発リーダーの川上(右)。遠近は「まだまだ、日々勉強です」と語っていた。
タイヤ材料部の遠近(左)と
開発リーダーの川上(右)。
遠近は「まだまだ、日々勉強です」
と語っていた。

欧州のハイパフォーマンスカーの強大なトルクとコーナリングのフォースを受け止めるために、すべての部材は剛性の高いものを採用した。だが、すべてを厚く、硬くするわけにもいかない。軽量化や乗り心地にも大きく関わってくるのだ。
ただ硬いだけではない、「ソフトさを身につけた微妙な硬さ」。そして、ただの肉厚ではない、「柔でない、たわむような薄肉化」。必要なところに必要とされる強度と厚みを持たせながら全体のバランスを保つ高剛性を実現する。その追求が、「硬くもなく、ソフトでもない、しなやかさを持ったタイヤ」を誕生させた。

さらに、ワイドトレッドの採用によりハンドリング性能の向上を図り、接地圧分布の最適化によって、ドライ/ウェット時のグリップ力も向上している。「最適化プロファイル」も綿密に行うことで、さらなるクオリティアップを促進している。

欧州には車外音の規制がある。そこで、パターンの最適なポジションを解析し、パターンノイズの低減を行っている。また、「非対称パターン」はロードノイズの低減にも貢献している。

「PROXES T1 Sport」は、「非対称パターン」「高硬度トレッドコンパウンド」「最適化プロファイル」により、総合力でも高性能を発揮するタイヤなのだ。

ハンドリング性能とドライ/ウェット時のグリップ力を向上させた最適化プロファイル。
ハンドリング性能とドライ/ウェット時のグリップ力を向上させた最適化プロファイル。

ぜひ一度乗って、『感じてほしい』…

「PROXES T1 Sport」と同時に発売されたプレミアムSUV用タイヤ「PROXES T1 Sport SUV」
「PROXES T1 Sport」と
同時に発売された
プレミアムSUV用タイヤ
PROXES T1 Sport SUV

開発リーダーの川上は、欧州での「PROXES T1 Sport」のテスト走行に同乗した。
その際に、時速200km〜300kmのスピードで一気に4車線レーンチェンジをするテストを行った。緊急回避時のための動作テストであったが、「けっこう安定していて、安全性は達成できた」と実感したという。
日本でのテスト走行時には「乗り心地がしなやかで、ガツガツ、ゴツゴツした硬さがない」と快適性能を感じることができた。

テスト走行を終え、川上はお客さまにこう言いたいと思ったという。
「ぜひ、一度乗って、『感じてほしい』…」

この「PROXES T1 Sport」と同時に、ハイパワーなプレミアムSUV向けの「PROXES T1 Sport SUV」も発売した。「PROXES T1 Sport」を完全に踏襲した上でSUVに特化している。

「SUVも良くできています」と笑って紹介してくれた川上の今後の目標は、売れるタイヤをつくること。
「欧州では性能が評価されるが、日本では性能だけではなく、それプラスアルファも必要となる。見た目などトータル的に特長のある売れる商品を開発したい」
最高水準の性能と付加価値の融合。川上にとってのプレミアムタイヤを求める日々には、終わりがない。

(2012年7月時点)



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