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第34回 「トランパスLuII」開発秘話 前編 
より重く、より大きくなるフラッグシップミニバンに、さらなる上質を。

2014年1月に発売される「TRANPATH LuII」
2014年1月に発売される
TRANPATH LuII

走行安定性と静粛性を両立したラグジュアリーミニバン専用タイヤとして、確固たる地位を築いた「TRANPATH Lu」。その発売からおよそ9年の歳月を経て、2014年1月「TRANPATH LuII」が登場する。人気と伝統のある「TRANPATH Lu」をさらに進化させるという重責を担ったのは、タイヤ技術第一部、商品開発グループの柴山と、トレッドパターンデザインひと筋20年の佐藤だ。「TRANPATH LuII」は、多くの熱心なファンを納得させることができるのか。その開発秘話に迫る。

「Luじゃなきゃダメ」の、その先へ。

2013年、秋。テストコースで「TRANPATH LuII」の試走を終えた柴山は、大きな達成感を味わったという。
「ノイズのレベルがかなり低く、特に高周波域のノイズが減って高級感のある静かさに仕上がっていました。しかも、開発段階から目指していた、しっかり感のある、それでいて上質な乗り心地も達成していたんです。それもインチアップした19インチで」

柴山は、入社7年目。機械工学を学んでいた大学時代からクルマが好きで、クルマの足回りに関わる仕事に就きたかったという。
「学生時代、クルマなしでは生活できない環境だったので中古のシビックを6万円で手に入れました。そのボロボロのシビックの足回りをいろいろ変えたりしていて、パーツひとつでも、タイヤひとつでも、クルマがガラッと変わることを実感しました」

「TRANPATH LuII」開発担当の柴山
TRANPATH LuII」開発担当の柴山

入社以来ずっと開発部門を歩んできた柴山。これまではアメリカ、ヨーロッパ向けのタイヤ開発に従事し、今回初めて国内向けタイヤの開発を任された。タイヤとしては異例のユーザーコミュニティサイト「TRANPATH Lu Club」(※)も運営され、「Luじゃなきゃダメ」というほどの熱心なファンも多い「TRANPATH Lu」を超えることができるのか?柴山は大きなプレッシャーを感じながらも、『タイヤひとつでクルマが変わる』という信念を胸に抱き、コンセプト策定に取り組んだ。

※「TRANPATH Lu Club」は、「TRANPATH LuII」が登場する1月中旬より、対象タイヤの追加にともないデザインも一新した新サイト「Team Lu」としてリニューアルします。

より上質な静粛性と快適性を目指して。

コンセプト策定にあたり、柴山はまず、前作「Lu」の持つ魅力と時代の変化について改めて考察を重ねた。

「Lu」は、「トヨタ アルファード」や「日産 エルグランド」などを対象車種に絞り込み、安定性と静粛性を高めたラグジュアリーミニバン専用タイヤとして誕生した。重く大きい高級ミニバンをしっかりと支え、しかも、前列、中列、後列、すべての座席に乗る人が静粛性を実感できるタイヤとして、ひとつの革新をもたらしたと言っても過言ではない。

それから9年。これらの高級ミニバンは、各自動車メーカーのフラッグシップミニバンとして、モデルチェンジごとに車両重量はより重く、室内空間はより広くなる一方である。そして、これまでの高級セダンの地位を奪うように官公庁などでも使用され始め、VIPの移動空間としてのポジションを確立している。

「TRANPATH LuII」開発コンセプト2つの柱

  • VIPが乗るにふさわしい上質な静粛性と快適性
  • より重く、より大きくなるフラッグシップミニバンを
    しっかり支える

柴山は、こうした時代の流れを受けて「TRANPATH LuII」のキーワードを『さらなる上質さ』に置いた。
前作「Lu」の魅力をさらに上のステージへ引き上げ、VIPが乗るクルマにふさわしい、より上質な静粛性と快適性を実現すること。そして、より重く、より大きくなるフラッグシップミニバンに「TRANPATH」シリーズの名に恥じないしっかり感を提供すること。これが2つの柱となった。

こうして、柴山は素材・構造設計の視点から、一方、トレッドパターンデザイナーの佐藤は、トレッドパターン設計の視点から、それぞれの専門分野から『さらなる上質さ』に挑む戦いが始まった。

より上質な静粛性を実現するトレッド配合。

今回、柴山が最も多くの時間を割いたのが、トレッド配合の検証だった。
材料設計グループへ何度も赴き、頭を下げながら、シリカ、カーボン、数種類のポリマーの組み合わせ、さらには製造工程までも試行錯誤を重ね、10種類ものトレッド配合を試作したという。

その理由は、より上質な静粛性を実現すると同時に、転がり抵抗性能、ウェットグリップ性能、ロングライフという基本性能のバランスも保つために、トレッド配合の新設計が不可欠だったからだ。

そもそも、タイヤは転がりやすくなるほど、ウェット路面でのグリップは低下する。この、相反する転がり抵抗性能とウェットグリップ性能を両立するだけでも高度な技術が必要となるのだが、ここに感覚的な指標である「上質さ」が加わると、さらに複雑な課題が持ち上がる。静粛性を高めるほどウェットグリップ性能は犠牲となり、快適性も味付けによっては転がり抵抗性能を犠牲にしてしまうのだ。

低燃費トレッドコンパウンド材料設計グループは、柴山の熱意に応えるように、低燃費タイヤ「ナノエナジー」シリーズによって培われた「Nano Balance Technology(ナノバランステクノロジー)」をさらに発展させ、進化した「フラッグシップミニバン専用」のトレッド配合を開発した。
スーパーアクティブポリマーとウルトラグリップポリマーを採用し、転がり抵抗性能“A”グレード、ウェットグリップ性能“b”グレードを両立。さらに、耐摩耗ポリマーによってロングライフ性能も向上し、それぞれの性能バランスを高い次元に押し上げた。

こうして「Nano Balance Technology」を駆使して生み出されたトレッド配合は、前作「Lu」よりも柔らかいものになった。そして、このトレッド配合と、佐藤が開発中の新しいトレッドパターンデザインがひとつになることで、かつてない上質な静粛性を達成することになる。

VIPの移動空間にふさわしいしっかり感へ。

トレッド配合とトレッドパターン設計だけでは、「TRANPATH LuII」のもう一つの柱である「より重く、より大きくなるフラッグシップミニバンをしっかり支える」というコンセプトは達成できない。
ましてや、前作「Lu」よりも柔らかいトレッド配合を採用したため、しっかり感の実現は一段と難しい。

また、トレッド配合が決まっても、タイヤの内部構造や、製造工程のちょっとした違いによって予想した結果が得られないことも多いのがタイヤ開発だ。
柴山はこう語る。
「入社したての頃に、工場の職人さんから言われた『ゴムは生き物や』という言葉を実感しました」

開発チームは、一丸となって重く大きいフラッグシップミニバンをしっかりと支える構造設計を徹底的に追求した。思いつくかぎり細部まで、カーカス、ベルト部分の素材や構造に至るまで工夫を重ね、いくつものプランを検証した。

スーパーハイターンアップ構造その結果、導き出された構造が「スーパーハイターンアップ構造」である。
カーカスの巻き上げ部分をトレッド(接地面)付近まで延長し、サイドウォールの剛性を確保。さらに、ベルト部分の構造を見直すことで、路面からの凹凸の入力を抑え、ガチガチとした硬さを感じさせない、VIPの移動空間にもふさわしい上質なしっかり感を達成した。

こうして、ひとつひとつの課題をクリアしながら『さらなる上質』を目指して開発が進められた「TRANPATH LuII」。その最大の特徴である静粛性については、次回「TRANPATH LuII」開発秘話 後編でお伝えする。
上質な静粛性を生み出した、佐藤の新しいトレッドパターンデザインとは?

「トランパスLuII 開発秘話 後編」はこちら

(2013年12月時点)



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