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プロジェクトTOYO

第35回 「トランパスLuII」開発秘話 後編 
上質な静粛性を生み出した、アイデアとこだわりの積み重ね。

2014年1月に発売された「TRANPATH LuII」
2014年1月に発売された
TRANPATH LuII

「TRANPATH LuII」開発秘話<前編>では、トレッド配合設計と構造設計の視点から「静粛性と基本性能の両立」と「フラッグシップミニバンをしっかり支える」という課題にアプローチした柴山の奮闘をお伝えした。
その一方で、トレッドパターン設計の視点から「より上質な静粛性」への挑戦を続けていたのが、トレッドパターンデザイナーの佐藤である。
開発秘話<後編>では、佐藤が生み出した新しいトレッドパターン設計と静粛性について掘り下げる。

「トランパスLuII 開発秘話 前編」はこちら

さらなる静粛性の追求。そもそもノイズとは?

佐藤は、前作「TRANPATH Lu」のトレッドパターンデザインも担当した。この道ひと筋20年のベテランである。

「自分でデザインした、それも高い評価をいただいた前作を超えなくてはならない。プレッシャーもありましたが、やりがいのあるチャレンジでした」

そう切り出しながら佐藤は「そもそも音とは?」という本質に触れた。ベテランといえども、新しい領域を切り拓くためには、その本質に立ち戻る。トレッドパターンデザイナーも職人なのだ。

トレッドパターンデザイナーの佐藤
トレッドパターンデザイナーの
佐藤

そもそも音とは?
人の耳が空気を通して感じ取る音とは、簡単に表現すれば空気の振動である。そして、その振動の周期によって音の「高さ」「低さ」が決まる。よく使われる周波数のヘルツ(Hz)とは、一秒間に何回振動しているかを表す単位で、振動する回数が多いほど高音に、少ないほど低音に聞こえる。一般的には高音側で20,000Hz(1秒間に20,000回の振動)、低音側では20Hz程度(1秒間に20回の振動)までが、人の耳に聞こえる音の範囲とされている。

では、ノイズとは?
タイヤのトレッドパターンによって生じるノイズは、その名の通り「パターンノイズ」と呼ばれる。そして、そのノイズは発生源によって2種類に分けられる。
ひとつは、トレッドパターンの溝で囲まれた個々のブロックが地面を叩くときに発生する「打撃音」、もうひとつは縦横の溝が潰れたり開いたりするときに発生する「ポンピング音(気柱管共鳴)」だ。

佐藤は語る。
「このパターンノイズのなかでも、とくにブロックの打撃音を低減する技術が、ピッチ分散です」

音の高低を意味する「ピッチ」を分散するとは、どのような技術なのか。
さらに話を伺うと、そこには「同じ周波数のノイズを同じタイミングで出さない」という、この道20年の匠の技術があった。

ノイズの周波数帯もタイミングも分散させる。

ここで「TRANPATH LuII」の非対称なトレッドパターンに注目してほしい。
サイプ(横溝)で隔てられたひとつひとつのブロックが、アウト側では大きく、イン側では小さくデザインされている。これは、リブ剛性を高め偏摩耗を防ぐデザインでもあるが、実は、静粛性にも大きく関わっているのだ。

ブロックの大きさが異なる。これを言い換えれば、アウト側はブロックの数が少なく、タイヤが一周する間にブロックが路面を叩く回数が少ない。逆にイン側はブロックの数が多く、タイヤが一周する間にブロックが路面を叩く回数が多い、ということになる。
それはつまり、パターンノイズの周波数が、アウト側ほど低く、イン側ほど高くなるということなのだ。

さらに、サイプが描くなめらかな曲線は、各ブロックが同時に路面を叩かないことを意味している。つまり個々のブロックにおけるパターンノイズが「同時に発生しない」のである。タイヤが回転しながら、パターンノイズの発生するタイミングが数万分の一秒レベルでもずれることで、ノイズの音圧が高まることを防いでいる。

佐藤は語る。
「要するに、同じような音程のノイズを同時に大合唱させない。ブロックの数に変化をつけながら精密にトレッドパターンをデザインすることで、パターンノイズの周波数帯も、パターンノイズが出るタイミングも分散させているわけです」

なめらかな曲線を描くサイプが、イン側からアウト側までパターンノイズ発生のタイミングをずらし、音圧の高まりを防ぐ。
なめらかな曲線を描くサイプが、
イン側からアウト側までパターンノイズ発生の
タイミングをずらし、音圧の高まりを防ぐ。

ノイズとひとくちに言ってしまうと、ひとつの音の塊のように感じるが、実際には、タイヤの回転に伴って、ひとつひとつのブロックが路面を叩き続ける音の連続。
佐藤のトレッドパターンデザインは、この絶え間なく発生している打撃音の、周波数とタイミングをずらすことで、人の耳に届くノイズを遠くに追いやっていったのだ。

上質さを高めるのは、小さな工夫の積み重ね。

静粛性を実現するための技術は、ピッチ分散だけにとどまらない。

今回、リブ剛性を高める目的とともに3本となった縦溝をよく見ると、サイレントウォールの存在に気づく。これは、走行時に溝が潰れたり開いたりすることで発生する「ポンピング音(気柱管共鳴)」を低減するものだ。

さらに、縦溝の側面をのぞき込むようにして見ると、溝の側面に小さなギザギザとした切り込みが入れられていることに気づく。これは、空気の流れに変化をつけ、「ポンピング音」の音圧を下げる効果があるという。

「他にも、横溝の容積をできる限り小さくしたり、細かなところまで静粛性を高める工夫を注ぎ込んでいます。それひとつで何デシベルもノイズが減る、というほど大きな効果はないのですが、小さな工夫の積み重ねです」と佐藤は語る。

さらに、トレッド配合・構造設計を担当した柴山が付け加える。
「ピッチ分散やサイレントウォールなどで低減しているパターンノイズは、空気を通して人の耳に伝わる空気伝播音のノイズです。クルマのノイズには、もうひとつ、サスペンションなどの固体を通して伝わる固体伝播音、いわゆるロードノイズがあります。これも、構造設計などによって前作より低く抑えられています」

「小さな工夫の積み重ねです」と語るトレッドパターンデザイナーの佐藤
「小さな工夫の積み重ねです」と語る
トレッドパターンデザイナーの佐藤

開発秘話<前編>で触れた、柔らかいトレッド配合は、路面の振動を受け止めてロードノイズの伝達を抑える。また、スーパーハイターンアップ構造は、タイヤの振動を抑制しロードノイズを低減させる。さらに、ワイドエッジプライなど、構造設計にも静粛性を高めるためのさまざまなアイデアが採用されているという。

TRANPATH LuII」の静粛性は、まさに【TOYO TIRES】の技術者たちのアイデアがひとつひとつ積み重ねられた作品と言っても言い過ぎではないだろう。
それは、1デシベル、2デシベル、という数値的な指標だけではなく、より感覚的な『さらなる上質さ』を求めて、トレッドパターンデザイン、トレッド配合設計、製造工程、構造設計など、それぞれの分野のスペシャリストが、現時点での可能な限りのこだわりを注ぎ込んだ結果なのだ。

上質さの追求は、見た目にも。

トレッドパターンデザイナー佐藤のこだわりは、「TRANPATH LuII」の見た目にも現れている。今や、VIPのための快適な移動空間でもあるフラッグシップミニバン。その専用タイヤとしては、見た目にも高級感が求められるからだ。

細部まで徹底した上質さの追求
細部まで徹底した上質さの追求

「実は、江戸切り子やカットグラスのような『切り子』のイメージが入っているんです。お店で見てもらえれば、すぐにわかると思います」
と佐藤は語る。

ガラス製品に繊細なカットを施すことで、美しい模様を描く技法『切り子』。高級カットグラスや、江戸切り子などの工芸品に見られるこうしたデザインを、タイヤのトレッドパターンにも取り入れたという。

確かに、トレッドパターンデザインをよく見ると、角が落とされているブロックがあり、カットグラスのような上質な佇まいを感じさせている。さらに、サイドの「TRANPATH LuII」のロゴは、エンボス文字で、タイヤを装着したときにすっきりと見える、高級感のあるデザインとなっている。これらはなかなか写真ではお伝えしきれないニュアンスもあるので、できれば、ぜひ実物をご覧いただきたい。

オーナーズクラブの声を楽しみに。

デザインを一新して生まれ変わった「Team Lu」
デザインを一新して生まれ変わった
Team Lu

前作「TRANPATH Lu」の誕生によって生まれたファンサイト「TRANPATH Lu Club」は、「TRANPATH LuII」の発売に合わせてサイトデザインを一新、TRANPATH Luシリーズ・ユーザーのためのオフィシャルコミュニティサイト「Team Lu」に生まれ変わった。

他に類を見ない「タイヤの公式ユーザーコミュニティ」として、さまざまな意見交換が行われていくなかで「TRANPATH LuII」はどう評価されるのだろうか。

柴山は言う。
「『TRANPATH LuII』の性能に自信があります。早くこの性能をユーザーさんに味わって頂きたいです。個人的には、初めて担当する国内向け製品なので、ぜひ地元の友だちからも感想を聞きたいです」

【TOYO TIRES】にしかできないラグジュアリーミニバン専用タイヤの進化形に、ユーザーからはどんな声が寄せられるのか、その反応が今から楽しみである。

(2014年1月時点)



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