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プロジェクトTOYO

第36回 「トランパスmpZ」開発秘話 前編 
究極のミニバン専用タイヤを目指す、ゼロからの出発。

2014年2月に発売される「TRANPATH mpZ」
2014年2月に発売される
TRANPATH mpZ

【TOYO TIRES】のミニバン専用タイヤ「TRANPATH mp」シリーズの最新モデル「TRANPATH mpZ」が、いよいよ2014年2月に発売される。
1995年の登場以来、元祖ミニバン専用タイヤとして市場をリードしてきた「TRANPATH mp」シリーズ。その最新モデルを開発するという重責を担ったのが、入社7年目、タイヤ開発第一部商品開発グループの吉川だ。大きなプレッシャーを背負いながら、ミニバンの大型化やタイヤの低燃費戦争など、時代のうねりに真正面から挑んだ吉川の奮闘をレポートする。

それは「Z」から始まった。

TRANPATH mpZ」の開発を担当した吉川は、自他ともに認める大のクルマ好きだ。クルマが大好きなあまり『クルマに関わるモノ作りがしたい』という情熱を抑えきれず、建築設計業界からタイヤメーカーへ転身したエンジニアである。【TOYO TIRES】入社後は、アメリカ向け製品を中心に開発、2011年からヨーロッパ向けのウインタータイヤなどを担当してきた。そして今回、それらの実績が認められ「TRANPATH mpZ」の開発に抜擢された。

「正直、大変なプロジェクトを任されてしまった、という気持ちもありました。国内向けの製品を担当するのは初めてですし、しかも主力商品ですから売れなきゃいけない。まるで社運を背負ってしまったような気持ちで」
と吉川は語る。

実績と伝統のあるミニバン専用タイヤ「TRANPATH mp」シリーズの最新モデルに、失敗は許されない。吉川はそれを十分に理解していた。しかも「mpZ」というネーミングは開発がスタートする以前から決められており、そこには吉川のプレッシャーをさらに大きくする、あるメッセージが隠されていたという。

「TRANPATH mpZ」開発担当の吉川
TRANPATH mpZ」開発担当の吉川

「『Z』には、アルファベットの最後である『究極』という意味と『ZERO』の頭文字の2つの意味が込められていました。つまり、現時点での究極のミニバン専用タイヤを作れ、ということと、ミニバン専用タイヤの原点に帰ってゼロから開発せよ、という意味だったのです」

究極のミニバン専用タイヤを意味する「Z」。
ミニバン専用タイヤをゼロから見直す「Z」。

社運を賭けた壮大なテーマは、開発前から決められていた。最高のTRANPATHを作らなくてはならない。吉川は、計り知れないプレッシャーとともに「TRANPATH mpZ」の開発に立ち向かった。

究極へ向けたゼロからの見直し。

そもそも、ミニバン専用タイヤとは何なのか?吉川は、原点に帰ってその存在意義を自問した。
ミニバンは車高が高く、高速道路のレーンチェンジや横風によってふらつきやすい。それを抑えて走行安定性を向上する性能こそが、ミニバン専用タイヤ「TRANPATH mp」シリーズの原点だ。

そして時代は、その性能をますます必要としている。毎年のようにミニバンの車内空間は大きくなり、車両総重量も増加しているが、タイヤサイズは従来のまま変わらず、タイヤへの負荷が大きくなり続けているからだ。自動車業界全体の動向から見ても、大型化するミニバンを「しっかり支える」基本性能をより高めなくてはならない。

さらに吉川は、自らショップへ出向きヒアリングを重ね、インターネット調査なども通してミニバンユーザーの生の声に触れた。
そこで感じたのは、
グレーディング制度が始まってから、燃費性能とウェットグリップ性能を重視するようになったタイヤ業界全体の動きのなかで、クルマを運転する楽しさが遠くに追いやられているのではないか」
という感覚だった。

グレーディング制度とは、2010年から始まった制度で、相反する「転がり抵抗性能」と「ウェットグリップ性能」を等級表示し、「転がり抵抗性能」A以上、「ウェットグリップ性能」a〜dの範囲内にあるタイヤを「低燃費タイヤ」と定義するもの。この制度の施行によって、タイヤ業界は燃費性能のアピール合戦に明け暮れるようになり、クルマを運転する楽しさを置き去りにしてしまった。

吉川は言う。
「たとえば、若い頃はクルマを運転することが大好きで愛車を大切にしていたけれど、やがて結婚して、子どもができて、ミニバンに買い替えた時点で、運転する楽しさをあきらめてしまうお父さんも多いと思うんです。でも、そんなお父さんにも、運転の楽しさをもう一度感じてもらえるような、そんなミニバン専用タイヤをゼロから作りたいと思いました」

「クルマを運転することが楽しいミニバン専用タイヤであってほしい」と語る吉川
「クルマを運転することが
楽しいミニバン専用タイヤであってほしい」と
語る吉川

クルマを運転することが楽しい。それはまさにクルマ好きにとっての原点である。
ミニバン専用タイヤは、家族のためにミニバンのハンドルを握るお父さんにとっても、運転が楽しくなるタイヤであってほしい。そしてもちろん、助手席、後席に乗る家族にとっても、ふらつきのない快適なドライブが楽しめるタイヤであってほしい。それこそが、吉川の考える「しっかり感」であり、吉川にとっての「Z」であった。

最大の課題はグレーディングと「しっかり感」の両立。

こうして、「TRANPATH mpZ」開発の軸は、ミニバン専用タイヤとしての「しっかり感」を最新の技術によってどこまで高められるか、にフォーカスされた。
しかし「しっかり感」にこだわるあまり、グレーディングを軽視することはできない。「TRANPATH mp」シリーズは、ファミリーユーザーに広く愛され、売れるタイヤでなくてはならないからだ。

吉川は語る。
「タイヤの転がり抵抗は、ウェットグリップ性能と相反するもの。しかも、しっかり感を追求した構造設計をとるほど、ますます転がり抵抗は増えてしまいます。しっかり踏ん張るということは、逆に言えば、転がりにくいということですから。
いかに、しっかり感を出しながら燃費性能を両立し、ロングライフ性能、ウェットグリップ性能もすべて満たすか?それが最大の課題になりました」

グレーディング制度によって燃費性能とウェットグリップ性能のバランスばかりを注視するようになったタイヤ業界において、さらに燃費性能と相反する究極の「しっかり感」を両立させる。この難題にこそ、吉川はやりがいを見出したと言う。運転する楽しさを遠くに追いやってしまったタイヤ業界に一石を投じたい、という一人のクルマ好きな男の姿がそこにあった。

吉川の熱意は、まるで水面に広がる波紋のように、社内に広がっていった。そして社運を賭けた「TRANPATH mpZ」の開発は、材料設計グループ、工場、データ解析、分析セクション、営業セクションなど、あらゆる部門をまたいだ総力戦になった。

やがて、プロジェクトを進めていくに従って、自然に3つの合い言葉が生まれたという。
「しっかり支える」
「しっかり長持ち」
「しっかり低燃費&ウェットグリップ」
3本の矢ならぬ、3本のしっかりである。

「トレッド配合、構造設計、工場での製造工程など、可能な限りの最新技術とアイデアを注ぎ込みながら、小さなチューニングを積み重ねて行きました。もう、本当に総力戦で、開発を進めるうちに、とにかくどの部門でも『しっかり』が合い言葉になっていきました」
と吉川は語る。

こうして、ゼロから究極のミニバン専用タイヤを目指した「TRANPATH mpZ」。
果たして、これだけ欲張りなコンセプトは達成することができたのか?

その背景にあるテクノロジーと、課題を解決するための試行錯誤については、開発秘話<後編>でお伝えしたい。

「トランパスmpZ 開発秘話 後編」はこちら

(2014年1月時点)



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