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プロジェクトTOYO

第38回 「トランパスLuK」開発秘話 前編 
背の高い軽自動車にこそ、しっかりとした専用タイヤを。

2014年2月に発売される「TRANPATH LuK」
2014年3月に発売される
TRANPATH LuK

2014年3月、【TOYO TIRES】のミニバン専用タイヤ「TRANPATH」シリーズに、まったく新しい軽自動車専用プレミアム タイヤ「TRANPATH LuK」がラインナップされる。
その開発を担当したのは、入社7年目、タイヤ開発第一部、商品開発グループの吉川と、トレッドパターンデザイナーとして20年のキャリアを誇る佐藤だ。
なぜ、今、軽自動車に専用タイヤが必要なのか?軽自動車専用タイヤとは、どのようなコンセプトを持つのか?その誕生秘話に迫った。

背の高い軽自動車は、ミニバンよりも不安定。

2013年、軽自動車の販売台数は過去最高を記録した。
日本自動車販売協会連合会(自販連)と全国軽自動車協会連合会(全軽自協)の発表によると、軽乗用車の新車販売台数は1,690,073台(※)。新車販売台数全体の4割に迫るほどで、およそ新車5台のうち2台は軽自動車という活況ぶりだ。

人気の理由は、燃費の良さや維持費の安さなどといった経済性だけにとどまらない。軽自動車はこれまでにないほど品質が高まり、快適な装備も充実している。さらに、室内空間もより広く、室内高もより高くなり、利便性も向上している。

「TRANPATH LuK」開発担当の吉川
TRANPATH LuK」開発担当の吉川

「今の軽自動車は、ひと昔前の軽自動車とはぜんぜん違います。こだわりを持ったユーザーさんも多いですし、コンパクトカーと比べても見劣りしない品質や、広い室内空間を持つようになりました。しかし、トレッド幅はそのままで車高が高くなったぶん、とてもアンバランスなフォルムになっています」
と吉川は語る。

吉川は、今の軽自動車を、ミニバン以上に不安定な「軽くて小さなミニバン」だと言う。それは、クルマの横幅と背の高さのバランスを見れば納得できる。

セダンタイプの軽自動車でも、トレッド幅と車高がほぼ同じ。正面から見ると正方形のようなフォルムになっている。さらに、ハイトワゴン、スーパーハイトワゴンと呼ばれるタイプになると、車幅よりも車高のほうが大きく「背高のっぽ」な縦長フォルムになっているのだ。

ハイトワゴン(軽自動車)、ミニバンの車高/トレッド幅比率
ハイトワゴン(軽自動車)、ミニバンの車高/トレッド幅比率

「ミニバンよりも縦に長く、しかも車重が軽いので、横方向からの力の影響を受けやすく、ふらつき感が出やすいんです」
と吉川は語る。

そして、このふらつき感を解消するために、一部の軽自動車ユーザーは、意図的にタイヤの空気圧を高くしているという。

トレッドパターンデザイナーの佐藤
トレッドパターンデザイナーの佐藤

「タイヤの空気圧を高く張って安定感を高めているユーザーさんもいらっしゃるようですが、このやり方だと、タイヤにかかる負荷が非常に大きくなって偏摩耗が起こりやすい。タイヤの寿命はぐっと短くなってしまいます」
とトレッドパターンデザイナーの佐藤は語る。

なぜ、こうした「苦肉の策」とも言える状況が生まれているのか。それは、軽自動車専用に開発されたタイヤが存在しなかったからである。

まったく新しいカテゴリーの軽自動車専用タイヤが必要。

これまでは、どのタイヤメーカーでも、製品ラインナップのなかでサイズの小さなものを軽自動車用としていた。いわゆるサイズ展開による対応だ。そしてそれは【TOYO TIRES】も同様だった。

しかし、時代は変化している。
今や軽自動車は、新車販売台数のうち約4割を占め、縦長なフォルムのハイトワゴン、スーパーハイトワゴンが人気を集めているのだ。

こうしたタイヤ業界と時代のズレを感じながら、吉川は、実際に軽自動車を運転することで「ミニバン専用タイヤ」に並ぶ「軽自動車専用タイヤ」の可能性を模索した。N-BOXをはじめとする人気の軽自動車を、一般道から高速道路まで、さまざまなシーンで運転したという。

吉川は「TRANPATH mpZ」の開発も担当した、クルマが大好き、クルマを運転することが大好きなエンジニアである。「TRANPATH mpZ」の開発にあたっては、ミニバンのオーナーにも運転する楽しさを感じてほしい、という情熱を込めて、「ミニバン専用タイヤ」に求められる「しっかり感」を根底から見直した。

この開発を通して、一般的なミニバンの試乗も重ねてきた吉川だったが、軽自動車のほうがミニバンよりも「怖さ」を感じたと言う。

「新しいカテゴリーの軽自動車専用タイヤが必要」と語る吉川
「新しいカテゴリーの
軽自動車専用タイヤが必要」と語る吉川

「実際に運転してみると、想像以上にふらつきや不安定さを感じて、正直、すごく驚きました。高速道路でのレーンチェンジはもちろん、トンネルの出口や、隣を大きなトラックが通過するときの横風など、とにかく怖い。車重も軽く、ハンドルも軽いので、ふつうの街中のカーブを曲がるときでさえも不安定さを感じるほどでした」
と吉川は振り返る。

もはや、従来のタイヤのサイズ展開だけでは、今の軽自動車に対応できない。軽自動車のユーザーがより安定感のある走りを楽しむためには、軽自動車のためだけに専用設計された、まったく新しい発想に基づくタイヤが絶対に必要だ。

そして「TRANPATH」シリーズの約20年におよぶノウハウの蓄積とアドバンテージこそが、今の軽自動車に必要なものだ。

【TOYO TIRES】の技術で、軽自動車の走りは一変する。
吉川は、そう確信した。

ナノバランステクノロジーによる配合の採用、「TRANPATH」シリーズの設計技術を軽自動車向けに注ぎ込み、試作モデルを実際に軽自動車に装着しながら綿密に調査と評価を重ねていく。【TOYO TIRES】でも初の試みとなる開発手法だが、それしかない。
技術者としての腹も決まった。

だが、こうした専用設計を行えば時間もコストも必要となる。もしもマーケットに受け入れられなかった場合は、大きな痛手となるリスクを抱えることになる。

ロングライフであること。上質であること。

なぜ、これまで軽自動車のために専用設計されたタイヤが存在しなかったのか?
その理由のひとつは、軽自動車が経済性を重視して選ばれる傾向にあったからだ。そのため、社内でも軽自動車のユーザーはタイヤの価格に敏感なのではないか、という意見が出たという。

「しかし、実際に、軽自動車に乗っている女性社員へのヒアリングや、ショップでの調査をしてみると、軽自動車特有の不安定さをタイヤで払拭できるのであれば購入したい、という声が非常に多かったんです」
と吉川は語る。

また、最近では車両価格がコンパクトカーと変わらない軽自動車も登場しているほか、カスタマイズを楽しむ軽自動車ユーザーも増えてきている。さらに、N-BOXなど、細部まで質感にこだわったプレミアム感のある軽自動車が人気を集めている。こうした傾向は今後も続くと予想される。

「性能が良くてロングライフなタイヤでなくては」と語る佐藤
「性能が良くてロングライフな
タイヤでなくては」と語る佐藤

「今の軽自動車ユーザーは、これまでのタイヤでは物足りなくなっているのが現状だと思います。走行安定性についてももちろんそうですし、乗り心地や静粛性についても、ひとつ上の軽自動車専用タイヤが求められている。これからもますますそうなって行くと思います。だけど、贅沢すぎてもダメ。燃費性能も良く、ロングライフでなくてはならない。ちょっと高くても長持ちする、結果的にはおトク感のあるタイヤが、最高の軽自動車専用タイヤだと思います」
そう語るのは、トレッドパターンデザイナーの佐藤だ。

こうして、開発チームは、実際に軽自動車のハンドルを握り、市場調査と議論を重ねながら、これまでにない軽自動車専用タイヤのコンセプトを固めていった。まったく新しいカテゴリーのタイヤだけに、開発の方向性を定めることは重要な作業であった。

まず、最優先すべき性能は、背の高い軽自動車を安定させるしっかり感を実現すること。そして、ロングライフと燃費性能を両立した経済性。さらに、プレミアム感を求めるユーザーも納得できる快適性や静粛性。これらを高い次元でバランス良く満たすことがコンセプトとなった。

そしてネーミングには、優れた走行安定性と静粛性を両立したラグジュアリーミニバン専用タイヤ「TRANPATH LuII」と同じく「Lu」を採用した。「トヨタ アルファード」や「日産 エルグランド」など、フラッグシップミニバンのユーザーから圧倒的な支持を受ける「Lu」を冠した軽自動車専用タイヤ。それはまさに、【TOYO TIRES】の自信の表れでもり、「最高の軽自動車専用プレミアム タイヤを世に送り出したい」という決意の表れでもあった。

「TRANPATH LuK」のコンセプト


背の高い軽自動車のふらつきを抑える「しっかり感」


低燃費とロングライフを両立した「経済性」


こだわりの軽自動車ユーザーも納得できる「上質さ」

こうしてスタートした「TRANPATH LuK」の開発。
かつてない軽自動車専用プレミアム タイヤは、はたしてどのように完成したのか。次回<後編>では、そのテクノロジーを掘り下げる。

「トランパスLuK 開発秘話 後編」はこちら

(2014年2月時点)



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