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プロジェクトTOYO

第39回 「トランパスLuK」開発秘話 後編 
軽自動車専用プレミアムタイヤという新たなカテゴリーへの挑戦。

新ジャンルの軽自動車専用プレミアムタイヤ「TRANPATH LuK」
新ジャンルの軽自動車専用
プレミアムタイヤ「TRANPATH LuK

これまでにない新ジャンルの軽自動車専用プレミアムタイヤを開発する。その挑戦は、タイヤ開発第一部、商品開発グループの吉川と、トレッドパターンデザイナーの佐藤を中心に動き出した。背の高い軽自動車のふらつきを抑える「しっかり感」を持ちながら、低燃費でロングライフ。しかも上質なタイヤ。コンセプトは固まったが、最高の軽自動車専用タイヤを世に送り出したい、という意気込みが高まるほど、相反する性能がぶつかり合う。試行錯誤の連続がそこにはあった。

「トランパスLuK 開発秘話 前編」はこちら

ミニバン専用タイヤのテクノロジーを結集。

吉川には、ひとつの確信があった。
元祖ミニバン専用タイヤとして業界をリードしてきた「TRANPATH」シリーズの「ミニバンをしっかり支える」というノウハウによって、背の高いアンバランスなフォルムの「軽自動車もしっかり支える」ことができるはずだ。
そこで、まず「TRANPATH mpZ」でも採用している「ワイドトレッド化」を軽自動車向けにチューンナップしながら構造設計を行った。

「ワイドトレッド化」とは、タイヤの接地面積を限界まで広げる設計技術である。タイヤが路面に接する面積を広げることで、まるで大きな足で大地をしっかり踏みしめるように、クルマの安定感は向上する。車両重量が軽く、背の高い軽自動車であれば、接地面が少し広げるだけでもその効果は大きい。それを規格枠いっぱいまで拡大することに成功した。

言葉にすると簡単に見えるが、約20年にもおよぶミニバン専用タイヤの研究成果と実証データを持つ【TOYO TIRES】だからこそ可能な、軽自動車専用の構造設計がそこには隠されている。

さらに、左右非対称のトレッドパターンデザインを採用し、アウト側のリブを大きくとった高剛性リブとした。これは、アウト側の「ふんばり」が効く設計であると同時に、タイヤの偏摩耗を抑える効果も発揮する。

「TRANPATH LuK」開発担当の吉川
TRANPATH LuK」開発担当の吉川

「まず、タイヤが路面と接する面積をできるだけ広げて安定性を高め、さらにアウト側のブロックを大きくすることで横方向の力に対する剛性を出す。このふたつはしっかり感を高める構造設計でもありますが、同時に、摩耗ライフを向上させる効果も発揮しています」
と吉川は語る。

内部構造には、タイヤ側面の剛性を高め、横方向からの力の影響を抑える「スーパーハイターンアップ構造」を採用した。これは、カーカスの巻き上げ部分をトレッド付近まで延長してサイドウォールの剛性を向上する技術で、軽自動車サイズのタイヤとしては贅沢な仕様でもある。

高速道路でのレーンチェンジはもちろんのこと、トンネルの出口や橋の上の横風、大型トラックの隣を走行する際の風圧など、軽自動車に影響を与えやすい横方向からの力に対する「しっかり感」を確保するため、タイヤ側面の剛性は欠かせないのだ。

しかし、こうした「しっかり感」を出す構造設計は、燃費性能を悪くしてしまう。タイヤがしっかりと「ふんばる」ということは、逆に言えば「転がりにくくなる」ということなのだ。軽自動車の大きな魅力のひとつは、燃費の良さである。タイヤがその魅力を損なってしまうようでは、最高の軽自動車専用タイヤと認めることはできない。燃費性能と「しっかり感」の両立は大きな課題となった。

燃費性能とロングライフの両立、という壁。

「ワイドトレッド化によって接地面積を広げ、スーパーハイターンアップ構造によって剛性をアップすると、転がり抵抗値も上がり燃費性能が悪くなってしまいます。グレーディング制度のなかで、転がり抵抗 “A”を保ちながら、同時にしっかり感を出すことが最大の壁でした」
と吉川は語る。

グレーディング制度とは、2010年から始まった制度で、相反する「転がり抵抗性能」と「ウェットグリップ性能」を等級表示し、「転がり抵抗性能」“A”以上、「ウェットグリップ性能」“a”〜“d”の範囲内にあるタイヤを「低燃費タイヤ」と定義するものである。「TRANPATH LuK」は、背の高い軽自動車を支える剛性を極限まで高めながら、転がり抵抗性能“A”、ウェットグリップ性能“c”を達成している。

低燃費トレッドコンパウンド摩耗チューン

このバランスを実現した背景には、【TOYO TIRES】の革新的な技術基盤である「Nano Balance Technology(ナノバランステクノロジー)」がある。ゴムの材料開発をナノレベルで制御し、タイヤに求められる数々の性能バランスについて、材料の段階からアプローチするものだ。

吉川は、材料設計グループに何度も足を運び、ゴム材料を構成する分子レベルでのシミュレーションを積み重ね、ひとつひとつ地道に要求性能を満たしていく。そして遂に、アクティブポリマーとシリカを増量し、燃費/グリップポリマーを最適なバランスで配合することで、転がり抵抗性能、ウェットグリップ性能、摩耗ライフ、それぞれをバランスよく向上させることに成功した。

上質さを生み出すトレッドパターンデザイン。

しっかり感と燃費性能の両立は、なんとかゴールが見えてきた。だが、それだけでは最高の軽自動車専用プレミアムタイヤとは呼べない。上質さ、静粛性までも実現してこそ、【TOYO TIRES】の軽自動車専用プレミアムタイヤなのだ。

「軽自動車は車両が軽く作られているので、タイヤのパターンノイズも車内に入って来やすい傾向があります。そのため、トレッドパターンデザインにはピッチ分散という技術を取り入れています」
とトレッドパターンデザイナーの佐藤は語る。

ピッチ分散とは、タイヤが発生するパターンノイズ(ひとつひとつのブロックが路面をヒットする際の打撃音)を低減する技術である。この技術は「TRANPATH LuII」にも採用されており、そのコンセプトを軽自動車用にチューンナップしたという。

「簡単に言えば、同じ周波数のノイズを同じタイミングで出さない、という技術です。ノイズの音程を分散させて、しかも、ノイズが発生するタイミングを数万分の一秒でもずらすことで音圧を下げる。曲線でそれぞれのブロックを隔てたトレッドパターンデザインに表れています」

個々のブロックの位置が少しずつずれているため、ノイズの発生するタイミングが重ならない
個々のブロックの位置が少しずつずれているため、
ノイズの発生するタイミングが重ならない

TRANPATH LuK」のトレッドパターンデザインは、「TRANPATH LuII」のトレッドパターンとの共通点が多い。排水性と各リブの強度を考慮した3本の縦溝、カットガラスなどに見られる「切り子」のイメージ、サイドウォールのロゴもエンボス加工され、プレミアム感を演出している。

「トヨタ アルファード」や「日産 エルグランド」などの高級ミニバン用タイヤとして高い支持を得ている「TRANPATH LuII」。そのハイクオリティな性能を軽自動車向けに凝縮したタイヤが「TRANPATH LuK」でもあるのだ。

実際に「TRANPATH LuK」を装着した軽自動車に試乗した吉川はこう語る。

「ハンドルを切って戻したあとのロールの収まりも早く、ふらつき感や不安感は各段に小さくなった印象を受けました。それから、静粛性も良い仕上がりになっていて、車内でふつうに会話が楽しめるほどでした」

「Lu」シリーズとしての自信。ふくらむ期待。

【TOYO TIRES】の「TRANPATH Lu」シリーズは、多くのファンに支えられ、ユーザー同士の交流も行われるほどの、特別なタイヤである。

デザインを一新して生まれ変わったファンサイト「Team Lu」
デザインを一新して生まれ変わった
ファンサイト「Team Lu

タイヤとしては珍しい、オフィシャルコミュニティサイト「Team Lu」が運営され、さまざまな意見交換や交流が行われている。そしてもちろん、今回発売となった「TRANPATH LuK」のユーザーも、この「公式ユーザーコミュニティ」の会員になることができる。

吉川は、こうしたオフィシャルコミュニティサイトに寄せられるユーザーの声も楽しみにしていると言う。これまでにない新カテゴリーのタイヤだけに、その評価は気になるところだ。

そして、1年後、2年後の評価についても期待しているという。なぜなら、偏摩耗対策、ロングライフについて非常に高いレベルを達成している、という手応えがあるからだと言う。

「たとえ他社が、後追いで軽自動車専用タイヤを出して来たとしても、負けない自信があります。これまでミニバン専用タイヤで培ってきた技術とノウハウには圧倒的なアドバンテージがありますし、とくに、偏摩耗への強さ、ロングライフという点では非常に良い試験結果が出ているからです」

背の高い軽自動車のふらつきを抑える「しっかり感」を持ちながら、低燃費でロングライフ、しかも上質さを感じさせる、軽自動車専用プレミアムタイヤ「TRANPATH LuK」。
これまで存在しなかった、まったく新しいタイヤが、軽自動車市場をますます活性化させるかも知れない。吉川と佐藤の自信に満ちた笑顔は、そんな予感さえ感じさせた。

(2014年3月時点)



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