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走れ!タイヤくん

第12回 タイヤの「みぞ」の「なぞ」に迫る

タイヤの顔は溝で決まる

プロクセス CT01
プロクセス CT01

タイヤの溝はウェット性能を始め、乗り心地や経済性、グリップ力、ノイズなどさまざまな目的に応じて綿密に設計されています。そのタイヤの性能は、まさにタイヤの顔が表している?

タイヤのウェット性能は、タイヤに刻まれているがカギを握っています。わかりやすいのがレーシングカーのタイヤ。路面がドライのときは、溝がまったくないつるつるのスリックタイヤ(※1)を履いていますよね。もしもこの世に「」というものが存在しなかったら、タイヤに溝は必要ないのです。

タイヤの溝は排水ポンプ?

ポイントは、タイヤと路面の間に水の膜ができないようにすることなんです。少々の水なら車体を支えているタイヤの重さだけで水を押しのけることができます。
ところが水が多くなると、タイヤの圧力だけでは水を取り除けず、タイヤと路面の間に水の膜ができてしまい、タイヤがしっかりと路面をとらえることができなくなってしまいます。そこで、タイヤに溝をつくるわけです。

タイヤは、回転しながら溝に水を抱え込んで、そして遠心力で後ろへ水を排出します。こうして、タイヤが路面に密着するようにしているんです。濡れた路面とタイヤの間は「絶え間のないバケツリレー状態」になっているようなものですね。溝さん、お疲れさまです。

ただし、タイヤが擦りへって溝が浅くなっていたり路面の水深が深くなって、溝による「バケツリレー」が追いつかないと大変です!高速道路を走っている時は特に危険。スピードが出ていると、最悪の場合は「ハイドロプレーニング現象(※2)」が起きてしまいます。直訳すると「水上飛行機現象」。路面の上にできた水の膜にタイヤが「乗って滑って」しまい、ブレーキやハンドル操作が効かなくなる状態になってしまうのです。こわ〜。

こうなったら残念ながらお手上げです。ハイドロプレーニング現象が起きた時は、タイヤのグリップが戻ってハンドルが効くようになった瞬間も危ないということを覚えておいてください。ハイドロプレーニング現象に陥ったら、むやみにブレーキを踏んだりハンドルをきったりしないで冷静な対処を!

ああ悩ましきアンビバレント(二律背反)

● 『ウェット性能とノイズ』の悩ましい関係

それじゃあ、もっと溝をいっぱいつくれば、もっとウェット性能が向上するんでしょうか?そんなにタイヤは単純ではないんです。
実は、この溝をつくるとタイヤからノイズが発生してしまうんです。トンネルで他のクルマがいない時、窓を開けてみてください。エンジン音や風切り音とは違うピーとかゴーッという音が聞えたら、それがタイヤのノイズ。
溝をいっぱいつくってウェット性能を高めれば、静かさが犠牲になってしまう。そこでなんとかこの2つを両立させようと、いろいろな溝の切り方…つまりトレッドパターン(※3)デザインに知恵を絞っているのです。
ノイズの他にも運動性などにも影響があり、有効接地面積(要するに溝以外の部分)との部分の比率でタイヤの特徴が決まります。ミニバン専用タイヤでは7:3くらいにしています。

● 『ウェット性能とタイヤのやわらかさ』の悩ましい関係

より良いタイヤへの悩みはまだ続きます。ウェット性能は、タイヤの溝に加えて、タイヤのゴムの質によっても変わるんです。やわらかいゴムにすれば、路面との摩擦は高まり、滑りにくくなります。でもやわらかくなるということは、耐久性が犠牲になってしまうこと。
それに、いわゆる低燃費タイヤ(転がり抵抗が小さいタイヤ)は、固めのゴムなんです。せっかく転がりやすい=低燃費のタイヤでも、ゴムが固ければウェット性能が劣ってしまう…そこに現れた救世主がシリカ(※4)!シリカを使うことによって転がり抵抗を下げることができ、その分、やわらかいゴムを使用することができるようになりました。この10年ほどの大きな成果の1つです。

ウェット性能が大切なわけ

タイヤを作る際になぜこんなにも溝にこだわるのか、どうしてウェット性能を高めようとするのか、それは雨の日の事故が晴れの日よりも多いからです。
(財)交通事故総合分析センターの調べでは、1998年における死亡事故8,797件を分析した結果、降水時には時間当たりの死亡事故件数は、非降水時より約1.16倍多いと報告しています。しかも自動車乗車中の事故死に限ってみれば、その数字は実に 1.67倍にはね上がっています。
時速40kmで走行している場合、雨の日の制動距離(※5)は4割伸びるとされています。皆さん気をつけてくださいね。

雨の降り始めに要注意

雨の怖さに気付いたら、まずウェット性能に優れたタイヤを選び、愛車の安全性能を高めるようにしたいものです。またいくらウェット性能に優れていても、摩耗して溝がすり減ったタイヤでは効果がなくなってしまいます。
タイヤの溝底には摩耗の度合いを示すスリップサインと呼ばれる印が6箇所あります。この印が出てくる前に、早めに買い替えるようにしてください。それから空気圧もウェット性能に関係してくるので、月に1回くらいは点検するようにしてくださいね。
意外なのが、雨の降り始めに事故が多いということ。下のグラフからもわかるように降り始めには、泥やほこりや油分などが浮いてきて、非常に滑りやすい状態になっているんです。

雨と滑りやすさの関係

雨の日に気を付けたいこと

  • 高速道路ではトラックなどでつくられる轍(わだち)に注意。速度を出しすぎるとハイドロプレーニング発生の危険性も!
  • ワイパーや先行車の水しぶきで視界が悪くなることにも注意。
  • 道路上の「とまれ」の文字や横断歩道など、ペイント部分は滑りやすくなっています。
  • 歩行者も傘をさしていたりして視界が悪くなっていることも忘れずに!

(2002年6月掲載)

(※1)スリックタイヤ
サーキット走行で晴天時に使われるタイヤ。溝がないため路面と密着しやすく、グリップ力が増す。

(※2)ハイドロプレーニング現象
水がたまった路面で、ある程度のスピードを出したとき、タイヤが路面をつかみきれずクルマのコントロールがきかなくなる現象。詳しくは「走れ!タイヤくん第23回」を参照。

(※3)トレッドパターン
いわば「タイヤの顔」ともいえる部分。タイヤの表面にある溝と切り込みで構成された柄や模様のこと。

(※4)シリカ
元素記号SiO2。微粒二酸化ケイ素のこと。

(※5)制動距離
ブレーキペダルを踏んだ後に、ブレーキが効き始めてからクルマが停止するまでの距離。



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